放送内容

第1654回
2022.12.11
かがくの里 の科学 場所・建物 地上の動物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 長期実験企画!目がテンかがくの里!最近、里に姿を現すようになったのが空飛ぶ哺乳類、ムササビ!去年8月には巣箱で2匹の子どもを出産する瞬間もとらえることができました!ムササビママと子どもたちは、今どうしているのか?子育て中のムササビママの驚きの行動を大公開!
 さらに!実は2021年から新たに進められていたキノコ栽培プロジェクト!そのキノコが今すごいことに!?
 今回は、ムササビ&キノコプロジェクト大公開スペシャル!

滑空&出産!ムササビの全記録

 去年、かがくの里でフクロウのヒナが2羽誕生し、幼鳥の姿を確認しました。そこでもう一つ気になるのが、子供を生んでくれた、空飛ぶ哺乳類、ムササビ。
 生息域は、樹洞が開いた大木がある山林など。夜行性で、木の葉っぱや木の実を食べて暮らしています。かがくの里でムササビの姿を初めて捉えたのは、2021年の6月。もともと、フクロウのために7つの巣箱を設置していたのですが、その巣箱の1つに夜、突然、ムササビがやってきたんです。
 さらに12月には、2匹。これは交尾前後のつがい、オスとメスの可能性もあるそうで、もしかすると里で繁殖、子育てするかもしれない。そこで、まずはサワラの木にムササビサイズの穴を開け、杉の木の皮を張り付けた専用の巣箱を作り、入ってくれるのを今か今かと待ちわびていました。
 そのころ、畑に近い杉の木で、ムササビならではの姿を目撃。木のてっぺんからの大滑空。杉の木に寝床にしている穴があり、木の実などのエサを取るため森へと移動しているのではないかといいます。かがくの里の裏山は、木の実などのエサが豊富で、ムササビにとって暮らしやすい環境ということがわかりました。

 そしてついに、専用の巣箱を設置して5か月が過ぎた去年4月、ムササビがやってきて中に入ったんです。しかも中はかなり快適だったようで、昼の1時に休み始めその後5時間ずーっと眠り続け、起きたのは夕方6時過ぎ。リラックスして眠る貴重な姿を見ることができました。以前訪れたフクロウ用の巣箱では、中で数十分、休憩する程度。ここまで長い時間、深く眠ることはありませんでした。
 このムササビが、ここを安心して過ごせる場所と見ている可能性があり、だとすれば、ここでの出産も期待できるかも!

 ムササビの交尾期は、6月頃と12月頃の年2回。12月に交尾をしていれば3月頃、交尾が6月なら9月頃に赤ちゃんが産まれる計算。すると!8月、ムササビが専用の巣箱で出産したんです。
 8月5日。巣箱に入ってきたムササビは、口に木の皮などの巣材を咥えていました。さらに、寝心地を確かめるような動きを見せました。そして、5日後の8月10日、深夜3時30分。横になったムササビはお腹の当たりを気にして、しきりに動き出し、今度は壁に手をかけ、いきむようなポーズで動かなくなりました。
 3分後、再びジタバタと体を動かし始め、3時34分、ついに赤ちゃんが出てきました!

 それから1時間後には2匹目も無事出産、かがくの里で赤ちゃんを産んでくれたんです!出産後、ムササビママはさっそく母乳を与え、2匹は一生懸命吸い付いていました。
 出産後も、昼夜問わず、授乳を繰り返し、子供たちを抱きしめ毛づくろいも。夜になると、元気に動き回る赤ちゃんに対し疲れ切って眠るムササビママ。
 実はムササビ、子育てし、子供が大人になるまで世話するのはメスだけ。オスは、交尾期だけはピッタリとメスの側にいますが、出産・子育てとも手伝うことはなく、いわばメスのワンオペ。ムササビママは、一日何度も赤ちゃんに授乳しながら外に出かけ、自分も食事をしないといけないんです。
 夜1時半、子供を巣材で隠すと、エサを食べるため巣箱を後にしました。30分後には巣に戻ってきてふたたび授乳。そしてそのまま睡眠と大変な毎日を過ごしているんです。 そして、出産から5日後のこと。ムササビママ、口に1匹の赤ちゃんを咥え、そのままどこかへ行ってしまいました。

 もう1匹は巣に残したまま。これはいったいどういうことなのか?
 実は、ムササビは天敵対策などで、普段から一か所にとどまることなく何ヶ所かの巣穴を移動しています。特に子育て中は、子供を守るため頻繁に移動するそうです。
 子供1匹を咥えて出て行ったおよそ15分後、再び戻ってきたムササビママはもう1匹を咥え、この巣箱を後に。引っ越し先は、なんとオシドリがヘビに卵を食べられた巣箱。子どもをくわえたムササビママは、巣箱の中に一匹目を置くと、その後、2匹目も巣箱へ。その10日後には、再び、出産した専用の巣箱に戻ってきたムササビ親子の姿が。出産からおよそ1ヵ月。2匹の子供が少し大きくなっているのがわかります。
 かがくの里の裏山で、無事にムササビの子供たちが成長し、大人になるのを祈るばかりです。

キノコ栽培プロジェクトスタート!

 2021年4月、キノコ栽培の専門家、米山先生に指導いただきキノコ栽培プロジェクトがスタート。
 今回おこなうのは、野外での原木栽培。菌を培養した、種駒と呼ばれるものを切り出したままの原木に打ち付けて栽培します。市販のきのこの多くは、室内でおがくずなどを使い栽培されていますが原木栽培は、伐採した木に菌を植え付けるので天然に近いきのこができる栽培方法。今回栽培するキノコは、シイタケ、ナメコ、キクラゲ、クリタケ、ヒラタケの5種類。
 原木には、里の裏山の間伐材を使います。実は間伐は、キノコにとって色々プラスになります。まず、間伐で伐った木をキノコ栽培の原木に利用でき、森に光が入り風が通ることで、原木栽培に適した環境になり、天然のキノコも自生するようになるんです。
 さっそく種駒の打ち付け開始。種駒の打ち込んだ原木は“ほだぎ”と呼ばれます。シイタケのホダ木は立てかけて設置し、直射日光が当たらないようにひさしをかけ、他の4種類は、地面を掘ってホダ木を半分だけ埋めるように置きました。シイタケ以外は、ホダ木の周りの土壌にきのこが出ることもあり、こうするそうです。

 キノコができるまでだいたい16~18カ月。実は、ちょうど18カ月後の10月の収穫祭で、所さんと隈さんに収穫してもらう計画でしたが、キノコは発生せず。キノコがならなかったのは、9月が暑すぎたことと雨が少なかったこと。暑すぎると乾燥してしまい、キノコ成長は止まってしまいますが、雨が降ることでホダ木内の乾燥を防ぎ、そこに新鮮な空気が入り込むことで、酸素も増えキノコも成長していきます。湿りすぎず、乾燥しすぎない、木漏れ日がさす風通しがいい環境がベストだそうです。
 気温が下がり、雨も増えれば今後キノコは発生してくれるはず。
 ということで、収穫祭の数日後。米山先生と阿部さんがおこなったのは、上と下、前面と裏面、これをそっくりと変えてあげる“天地返し”。天地返しすると、環境の変化がホダ木の中の菌に刺激を与え、成長がより促進されるそうです。さらに西野さんが、乾燥を防ぐため、ホダ木に水をかける「散水」をしてくれました。
 そして1ヵ月後。キノコはなっているか、確認に行くと、シイタケが大量発生!!米山先生によると、傘が開くほど成長すると、胞子が飛んで栄養素が減ってしまうんだそう。一番美味しいのは、傘がまだ開いていない“六分”。

 今回は傘の開き具合にかかわらずすべてのシイタケを収穫。
 さらに他のキノコが出ていないか見てみると、太い切り株のホダ木に、シメジに似たキノコ、ヒラタケが!
 そして、ナメコも大量発生!ナメコ特有のヌルヌルは、粘性多糖体と呼ばれるもの。虫かた身をも守り、さらに乾燥を防ぐために分泌しているといわれます。傘が開く前の裏側は、大量のゼリー状のものが大量に。
 この立派なナメコも収穫し3種類のキノコと里の味噌でみそ汁に!巨大シイタケは七輪で炭火焼きに。スタジオで食べた所さんも大絶賛でした!