第1688回 2023.08.13 |
コスタリカの科学③ | 夏休み特集 場所・建物 地上の動物 |
夏休み海外特集。今回、訪れた場所は、中米に位置するコスタリカ!いかちゃんとTokyo Bug Boysが生物多様性豊かなコスタリカで生き物観察。
今回はなぜこんなにも生き物が豊富なのか、その秘密に迫るためコスタリカの森を調査!さらに念願のあの虫とご対面!
今回の目がテンは、夏休み海外特集!生き物の宝庫!コスタリカの科学③です!
コスタリカの生物多様性のカギは火山!?
まずいかちゃんが向かったのは、コスタリカの生物多様性のカギを握る、火山。コスタリカには、南北に連なる山脈があり、そのうちのいくつかは、今も小規模な噴火を繰り返す活火山でもあります。
ここで出会ったのが、中米に生息するベアードバク。
体長はおよそ2m。水辺に生息する草食動物で、今回出会ってきた生きもののなかで最大の大きさ。周辺の生態系の豊かさを物語っています。実は、この火山や南北に連なる山脈が、コスタリカの生物多様性に大きく関わっているというんです。
熱帯の環境について研究している京都大学の北島薫先生によると、熱帯の特徴でもある東から西に吹く風、貿易風が関係していると言います。これがコスタリカの場合は、東側から湿気の含んだ風が吹き、山脈を登って、西側は乾いた風になって吹きます。そのため、カリブ海側は雨が降り、太平洋側は乾燥します。
このような気候や地形は、自然や生態系に影響を与えます。一年中雨が降る熱帯雨林、一年のうち6ヶ月以上雨がほとんど降らない乾燥した地域の熱帯乾燥林、標高が高く雲や霧に覆われる地域、山地雲霧林などがコスタリカには存在します。このように様々な自然環境があることで生物多様性が育まれているのです。
様々な自然環境が育む豊かな生態系
コスタリカの豊かな生態系を支える代表的な、熱帯雨林、山地雲霧林、熱帯乾燥林がどんなところか調査。
まず、いかちゃんたちが向かったのは、コスタリカの北東部に位置するサラピキの熱帯雨林。熱帯雨林は背の高い木々が並び、頭上は葉でおおわれるため暗いのが特徴。葉が密集した部分は林冠と呼ばれ、熱帯雨林の中でよく日が当たる部分。鳥などをはじめいろんな動植物が集中して暮らしています。一方、森の地面は、林床と呼ばれ、場所によっては、太陽光が1%も届かないんです。
そんな暗い林床で見つけたのは、スカートのように広がる根、板根。
これは雨が多い森ならではのもの。熱帯雨林は、水が豊富で、地下水が地中の上の方を流れているので根を深く張る必要がありません。しかし木は、光を求めて上にぐんぐん伸びるので、長身を支えバランスをとるため、横方向に根を広げ板状になるのです。
さらに暗い森では、光を求める植物たちが、様々な戦略で生き残っている姿を見ることができます。コケやラン、シダなどは、より多くの光を求めて、地面ではなく、木の上の幹や枝などに場所を移し、他の植物の表面に根を張って生活をします。このような植物を着生植物といいます。
熱帯雨林は温暖で水も豊富なため、植物にとっては過ごしやすい場所。しかし生存競争が激しい環境でもあります。お互い、競い合い、共存し、進化することで、種がどんどん増えていくのです。
出会ったのは植物だけではありません。見つけたのは、クビワペッカリー。
イノシシにもよく似ていますが、南北アメリカ大陸に生息するイノシシとは別物のペッカリー科の哺乳類です。ほかにも、体長3cmほどのサシハリアリ。コスタリカでは熱帯雨林でしか見られず、お尻の針で刺されると銃で撃たれたぐらい痛いことからダンガンアリとも呼ばれます。
ここからはバグボーイズと別れ、いかちゃんがその他の森を調査。
向かったのは、山地雲霧林が広がるモンテベルデ。山地雲霧林はその名の通り、熱帯雨林より標高が高く、一年中霧に覆われていることも多い森。空気中から水分を取りやすいこともあり、熱帯雨林よりさらに着生植物が多いことも特徴のひとつ。
森で早速見つけたのは巣立ったばかりのケツァール。ケツァールは、雲霧林に多く生息しているといわれている鳥なんです。さらに、森の中にかけられた吊り橋から、林冠の生態系を見ます。すると、木の上で生活しているヘビも発見。もちろん、植物も近くで観察できます。元の木の形がわからないぐらいに着生植物がびっしり付着した木もじっくり調査しました。
最後に向かったのは、コスタリカ北西部、太平洋側に面したグアナカステ。ここにあるサンタ・ロサ国立公園は世界自然遺産にも登録されている場所。
太平洋側のこの公園は、熱帯乾燥林が広がる森。乾燥林は雨が降る季節、雨期と、雨が降らない季節、乾期があるのが特徴。森に入っただけでその違いは一目瞭然。比較的背の低い木が立ち並び、着生植物も少なく、また乾季には葉を落とす落葉樹も混在する乾燥林をいかちゃんは観察しました。
同じ国、同じ時期でこんなにも自然環境が違うことで、豊かな生物多様性を育んでいたんです。
ピカピカ光るプラチナコガネ
いかちゃんが、熱帯林の調査をしている間Tokyo Bug Boysの2人は、山地雲霧林が広がるモンテベルデの研究施設で寝泊まりをし、昆虫の撮影に挑みます。
2人が狙うのは、モルフォチョウ、プラチナコガネ、ハキリアリなど、どれも中米コスタリカならではの昆虫です。
到着して最初に発見したのはミツギリゾウムシ。
幸先のいいスタートにこれからの期待が高まります。そして初日の夜。昆虫観察のため、ライトトラップを仕掛け、昆虫を待ちます。さて、どんな虫が現れるのか?
観察を続けること1時間半。ここでついに、プラチナコガネが!念願だった虫を目の前に大興奮!
鏡のようにピカピカと輝く、メタリックなボディが特徴のプラチナコガネ。
しかし、森の中で見たら目立って狙われてしまうのでは?実は、この輝きこそが、プラチナコガネが周りを欺くために重要な役割を果たしていたんです。鏡のような体は、周囲の緑を映し込み、見事に、森の中に溶け込むんです。
まるで人工物のように見える外見は、意外にも、自分の体を目立たなくする効果がありました。Tokyo Bug Boysはプラチナコガネ生態に迫る瞬間の撮影に見事成功しました。