第1687回 2023.08.06 |
コスタリカの科学② | 夏休み特集 場所・建物 地上の動物 |
夏休み海外特集!今回、訪れた場所は中米に位置する、コスタリカ!生物多様性が豊かなコスタリカで、いかちゃんとTokyo Bug Boysが生き物観察!前回は、世界一美しい鳥と言われるケツァールの色鮮やかで神秘的な姿を撮影。さらに、コスタリカを代表するカエルなども観察できました。
そして今回は、生き物たちのさらなる貴重な瞬間の撮影に成功!
今回の目がテンは、夏休み海外特集!生き物の宝庫!コスタリカの科学②です!
身近なところで生き物観察!
コスタリカ北東部、いかちゃんたちが宿泊しているのは、サラピキの熱帯雨林の中に建てられているロッジ。自然の中にあるため、たくさんの生き物たちを間近で観察することができるんです。
そんな場所で、まず出会ったのが、イチゴヤドクガエル。派手な色は毒を持っているという警告色。危険を感じると皮膚から毒を分泌します。昔の人々は、ヤドクガエルの毒を矢に塗って、狩りに使っていたとも言われています。そして、高い木の上で見つけたのがカワリリス。木の実を食べる可愛らしい姿を見られました。
さらに、大きくて鮮やかなクチバシをもつ、オオハシ。コスタリカを代表する鳥です。
巣に戻った子育て中のオオハシが、口をあけてエサをあげていると思われる様子を撮影。しばらくすると、巣の中に帰っていきました。
そして、建物の中からは、ホエザルが。その特徴は、なんといっても鳴き声。
さらに、中南米に多く生息するハチドリ。体長10cm前後の小さな鳥です。特徴は、毎秒50回ほどの猛スピードの羽ばたき。そして、長いくちばしを使って蜜を吸う、その姿。よく見てみると、羽を単純に上下させているのではなく8の字を描くように動かしています。この飛び方は「ホバリング」と呼ばれ、空中に静止しながら飛ぶことができるのです。
さらに、ハチドリの胸の辺りをよく見ると、羽の色が変わっているのがわかります。生き物が持つ色について研究している東京理科大学の吉岡伸也先生によると、これは実際に羽自体に色がついているのではなく、色がついているように見える「構造色」という発色現象。鳥の羽は、軸の左右に羽枝と呼ばれるものがあり、その羽枝からさらに枝分かれした小羽枝があります。ハチドリの小羽枝は、円盤状の粒が重なった複雑な構造になっていて、特定の波長の光だけが強く反射されるので、鮮やかに色づいて見えるのです。
前回、紹介した世界一美しい鳥といわれる鳥、ケツァールの鮮やかな緑色の羽も構造色によるもの。
コスタリカでは、人と近い距離で様々な生き物を観察することができるのです。
生き物たちの共生関係
ハチドリがヘリコニアという花の蜜を吸う様子。実はこれ、ハチドリとヘリコニアの、ある重要な関係性がわかる瞬間なんです。
ハチドリが飛んできてヘリコニアに止まると、長いくちばしを使って、筒状の花の中にある蜜をごくごくと飲んでいます。実はこのヘリコニア、ハチドリのためにあるような植物だというんです!
熱帯の環境について研究している京都大学の北島薫先生に聞いてみると、これは共進化とのこと。共進化とは?
ヘリコニアの蜜があるのは、おしべとめしべの奥の部分。この長い花の形状は、ハチといった昆虫などが吸えない形のため、ハチドリの長いクチバシだけが差し込めるようになっています。ハチドリが蜜を吸っているときに、クチバシ部分に花粉が付着。別のヘリコニアに移動する際に花粉を運び、受粉を促します。ハチドリが、ヘリコニアの花粉の媒介者となっているのです。
ハチドリは、ヘリコニアの花の形に合わせてクチバシが長く進化し、ヘリコニアは、ハチドリだけが蜜を吸えるように花の形が深くなるように進化しました。ハチドリとヘリコニアの間で、お互いが影響しあう共進化が起こったのです。ハチドリは蜜を独占でき、ヘリコニアは、受粉を確実にする。このように進化し、共生してきたんです。
そして、共生関係をもっている生き物は、他にも。前回出会った、ナマケモノ。ナマケモノが主食にしているのは、セクロピアと呼ばれる木の葉っぱ。ナマケモノは、およそ1週間に1度、下りてきて木の根元にフンをするのですが、そのフンが栄養となり、セクロピアの成長を促している、と言われています。
さらに、それだけではなくミユビナマケモノは、ガとも共生関係を築いているんです。ナマケモノのフンにガが卵を産みつけます。幼虫はフンの中で羽化し、成虫になると、飛んで木の上にいるナマケモノの毛の中へ。その毛の中をすみかとして、ナマケモノが出す分泌物を食べて暮らしています。ナマケモノはというと、ガの出す排泄物が肥料となり、ナマケモノ自身の体に藻が繁殖。この藻を、毛づくろいするときに、口から摂取することで、普段食べる葉っぱからでは取り入れられない脂肪分など重要な栄養源を得ることができているのです。ガはナマケモノをすみかとし、ナマケモノは、ガが作る藻を食べることで、互いに共生関係を結んでいたんです!
生き物同士が支え合って生きる共生関係は、コスタリカの生態系を支える重要な仕組みだったんです。
バグボーイズの昆虫擬態クイズ
コスタリカ滞在中、たくさんの生き物をカメラに収めているバグボーイズの2人。
中には一風変わった昆虫もいるということで「昆虫擬態クイズ」という形で紹介しました。
まず、前回探索した森で3人が案内された先にいた昆虫、ナナフシ。
体が細く、手足が長い、ナナフシ。日本でもよく見かける昆虫で、じっとしていると木の枝にしか見えません。
続いての昆虫は、サルオガセギス。
ツユムシの仲間。身体の柄や、全身にあるトゲがポイントで、コケに似た地衣類のサルオガセに身をひそめると、見事に溶け込んでしまいます。
さらに、木の幹の上で擬態するカマキリ。コケなど環境や背景に擬態するのは、外敵である鳥などから身を守るため。さらに、カマキリは、小さな昆虫を食べる肉食昆虫であるため、周囲と同化して獲物を待ち伏せできるというメリットもあると考えられているんです。
続いては、独特な擬態をする昆虫を紹介。フクロウの目玉に擬態をする昆虫は、フクロウチョウと呼ばれるチョウ。
主に中南米に生息。この目の模様で天敵である鳥などを威嚇しているといわれているんですが、実は、この羽に隠された生き物は、フクロウだけではないんです。羽の先に見えてくるのはヘビ。フクロウの目だけでなく、ヘビの顔にも擬態していたんです。
最後に、色んな擬態をするガを紹介。木の葉にそっくりで周囲に溶けこむシャクガの仲間。葉が枯れたような柄も再現されており芸の細かさはお見事!
そして、木の枝に化けているシャチホコガの仲間。さらに、木の枝と見間違えるぐらい同化しているのは、中南米に生息するオオタチヨタカのひな。
個性的な擬態方法で、生き物たちは進化し、身を守っていたんです。