第1話「みだれ髪」
2009年1月17日放送
昭和の文豪と呼ばれ、20年前に他界した市川草太郎(田中哲司)。その娘、晶子(吉瀬美智子)、藤尾(紺野まひる)、節子(高橋真唯)の三姉妹は、父親が残した屋敷で暮らしていた。まるで母親のように妹たちの面倒を見ている長女・晶子。自由奔放で気まぐれな次女・藤尾。病弱な三女・節子。
ある日、草太郎から、20年の時を越えて、1通の手紙が郵送されて来た。中には、「20年後の娘たちへ、これが私の愛。私の秘密。どうか私を許して欲しい」という手紙とともに、鍵が同封されていた。
草太郎の書斎にあった秘密の書庫に鍵がぴったりはまった。扉を開けると、そこには、十数冊の本と“順に読め!”という草太郎のメモが。
1番最初の本は、“与謝野晶子のみだれ髪”だった。与謝野晶子がどんな人なのか、わからない藤尾に、節子は、その一生を愛に捧げた晶子の生涯を説明する。晶子は、“与謝野晶子”が自分と同じ名前であることに、なにかを感じ、重ね合わせ妄想の世界に入っていく。
“みだれ髪”の奥底に潜む官能的な断片に触れ、晶子の感性で、妄想し、堪能する…。
父親の残した“与謝野晶子のみだれ髪”から、自らの感性で、晶子は、何を感じたのか。
第2話「虞美人草」
2009年1月24日放送
晶子(吉瀬美智子)、藤尾(紺野まひる)、節子(高橋真唯)の三姉妹が、父・草太郎(田中哲司)の書斎の秘密書庫で見つけた2冊目の本は、夏目漱石の『虞美人草』だった。この物語の主人公は、美しく傲慢で、虚栄心が強く、男心を自由に操る女。父親が亡くなったばかりの主人公は、その財産を全て相続することになっていた。
主人公の自慢は、子供の頃からおもちゃ代わりに与えられていた高価な舶来の金時計。主人公は、この時計をあげた男に、自分自身も与えようと決めていた。男たちが金時計を奪い合う内容だと知った藤尾は、主人公が自分と同じ名前だったこともあり、この本の妄想の世界に入り込んでいった――。
男に弄ばれることを決して許さない藤尾は、愛の女王のように振る舞っていた。近づく男、小野(小林高鹿)や宗近(チョウ・ソンハ)を、その妖しい色香で翻弄する藤尾。肌身離さない藤尾の金時計は、2人を惑わす小道具として使われる。やがて、宗近が親の決めた許婚だったにもかかわらず、藤尾の気持ちは小野に近づいていった。
ある日、小野にデートをすっぽかされた藤尾は、見知らぬ若い女といた小野を追及した。怒り顔の藤尾に、小野らと一緒にいた宗近は、思わぬ話を明かす。2人と共にいた女は、実は、小野と近々結婚する予定の小夜子(吉野汐理)。デートすれば小夜子と結婚できなくなると気付いた小野は、ついに藤尾との約束を破ったのだ。
小夜子と結婚するという小野の意志を確かめた藤尾は、動揺を隠しながら例の金時計を宗近に手渡すが――。
第3話「風立ちぬ」
2009年1月31日放送
父親・草太郎(田中哲司)が娘たちに残した3冊目の本は、堀辰雄の『風立ちぬ』だった。その内容は、作家(眞島秀和)の男と、結核にかかった女との純愛を描いたもの。節子(高橋真唯)は、自分の性格と似ている小説の主人公“節子”に自分を重ねあわせ妄想する。
作家が愛し、プロポーズした相手は、不治の病ともいわれた結核に侵された女・節子。サナトリウムに入院した節子の肺は、病魔に大きく蝕まれていたのだ。医師(ヨシダ朝)から、節子の余命が少ないと告げられた作家は、迫り来る別れの恐怖と闘いながら、最後まで愛し抜こうと心に決める。一方、自分の死期を感じた節子も、作家の愛に応えようと精一杯生きるのだ。
晶子(吉瀬美智子)、藤尾(紺野まひる)、節子の3人は、自分たちの名前の由来となった女性が、どうして全く違う性格なのか、と話し合った。その結果、浮かび上がった推理は、自分たちの母親が3人とも違う、ということ。晶子は、『みだれ髪』『虞美人草』『風立ちぬ』の3冊の本に書かれた主人公たちが、自分たちの母親の姿ではないか、と言い出した。
晶子は、節子の母親は、何か重い病気をしており、いつも薬の臭いがする離れで寝たきりだった、と思い出す。そして、節子の母親が突然逝ってから、草太郎は、書斎に篭り切りになり、まもなく亡くなって発見された。晶子たちは、草太郎の死が、自分たちの母親に関係があるのではないか、と考えて――。
第4話「外科室」
2009年2月7日放送
秘密の書庫の本の中に、自分たちの母親についてのヒントが隠されているとにらむ晶子(吉瀬美智子)、藤尾(紺野まひる)、節子(高橋真唯)の三姉妹。4冊目の本が、一瞬と永遠についての愛の物語、泉鏡花の『外科室』だと知った晶子は、さっそくその本を手にとって読み始めた。
物語の主人公は、入院中の貴船伯爵夫人。主人公は、医学士・高峰(山中聡)の執刀による胸の手術を受ける必要があるのだが、心の奥底の秘密を口走ることを恐れ、麻酔を一切拒んでいた。手術に立ち会う婦長は、たとえ何かを話しても決して口外しない、と約束するが、夫人は納得しない。夫人の意思が固いと知った高峰は、婦長ら看護師たちを手術室から出し、ひとりだけでメスを執った。
実は、9年前、夫人と高峰は、すれ違った際、お互いに目を奪われ、永遠の恋に落ちた。激痛に耐えながら話をした夫人は、自分が忘れられていると思い込み、高峰の手を掴んでメスを自分の胸に突き立てる。その後、高峰は、虫の息の夫人を抱きかかえながら、未だに忘れえぬ恋心を告白するのだった―。
第5話「智恵子抄」
2009年2月14日放送
秘密書庫の中の11冊の本を全て読み終えた時、父・草太郎(田中哲司)の死の謎が明らかになるかもしれない―。早く真相を知りたい節子(高橋真唯)は、ひとり抜け駆けしようとして見つかり、藤尾(紺野まひる)と口喧嘩を始める。そんな2人をたしなめた晶子(吉瀬美智子)は、積まれていた残る7冊の本の一番上、高村光太郎の『智恵子抄』を手にした。
この本は、彫刻家で詩人の高村光太郎と妻・智恵子のラブストーリーで、妄想や幻覚を起して理性を失い狂気となった智恵子を、光太郎が愛し続ける、という内容。智恵子が光太郎を置いて先に逝ってしまった、と節子から聞いた藤尾は、すぐに本を受け取って読み始めた―。
無邪気でくったくがなく、まるで幼女のような智恵子と光太郎が初めて結ばれたのは、アトリエの中。智恵子から生きる力を吹き込まれた光太郎は、意気揚々と創作を開始する。生き生きと作品に向かう光太郎を、幸せな表情で見つめる智恵子。だが、精神に異常をきたした智恵子は、光太郎の愛に包まれながら天国へ旅立つ。その後、光太郎は、智恵子を思い浮かべながら最後に裸婦像を完成させて亡くなるのだ。
死んで消滅した智恵子の肉体と魂を、彫刻と詩で永遠のものにした光太郎。この作品について話を始めた晶子、藤尾、節子の3人は、19もの長編、いくつもの短編を残した草太郎の作品の中に、光太郎が智恵子を永遠のものにしたのと同じものがあるのではないか、と推理した。
互いに自分の母親を思い浮かべた3人の謎は、さらに深まって―。
第6話「白痴」
2009年2月21日放送
草太郎(田中哲司)の死の謎とは、晶子(吉瀬美智子)、藤尾(紺野まひる)、節子(高橋真唯)の母親は一体誰なのか―。3人は、手っとり早く草太郎の作品の中にヒントが隠されている可能性を話し合った。しかし、草太郎の作品の傾向を考えた3人の期待は、あっさり打ち砕かれた。草太郎は、既存の文学における私的リアリズムを否定した、いわゆる“無頼派”のひとり。常々、私小説を恥だと言っていた草太郎が、作品の中に自身の体験を書くはずはない。つまり、手紙に指定した秘密書庫の本を順に読み進めるしかないのだ。
そんな3人が次に手にした6冊目の本は、無頼派の旗手・坂口安吾の『白痴』だった。作品の舞台は、太平洋戦争末期の東京の一軒家。主人公の伊沢(松尾敏伸)は、空襲でいつ死ぬかもしれない状況下、隣家に住む白痴の女を自分の家に囲うことになるのだ。本を手にした節子は、たちまちその中にのめり込んでいった。
空襲の危機が迫る中、帰宅した独身会社員の伊沢は、押入れに隣家の若い白痴の女・オサヨ(高橋真唯=二役)が潜んでいることに気付く。隣家の住人がすでに避難したと知った伊沢は、オサヨへの肉欲に耐えながら、世話を始める。やがて、白痴のような幼く素直な心が自分に必要だと考えた伊沢は、オサヨの肉体にのめり込む。そして、空襲の音が近づく中、2人は、愛欲に溺れて行くのだ。
本を読み終えた晶子らの話は、白痴のように真っ白で、何色にでも染まるこの女が誰か、ということになった。この“白痴”の女は、自分たちの個性的な母親たちとは全く掛け離れている。3人は、ひょっとすると、自分たちの母親以上に、草太郎に強い影響を与えた女がいたかもしれない、と考えて…。
第7話「お勢登場」
2009年2月28日放送
晶子(吉瀬美智子)が家にいるときとは違うオシャレをして外出した日の夜、草太郎(田中哲司)の書斎に集まった三姉妹。7冊目の本は、江戸川乱歩が書いた『お勢登場』だった。節子(高橋真唯)は、グロテスクな人間の本性を描いた乱歩の作品のひとつで、主人公は夫を殺す悪い女だったと、藤尾(紺野まひる)に説明する。3人は、前回の本である『白痴』で浮かび上がった誰の母親でもない“白い女”の存在を知って嫉妬した妻の誰かが草太郎を殺した可能性もある、と推理。
この本を手に取った晶子は、本の世界に入り込んでいく。
肺病の夫・格太郎(高橋和也)と暮らすお勢(吉瀬美智子=二役)は、白い肌がなまめかしい妖艶な女だった。格太郎が自分にメロメロだと知っていたお勢は、大きな長持ちの中に誘い込んでは、フタを閉めて情事にふける。だが、そんなお勢には、若い書生(山中雄輔)の愛人がいた。そして、そのことを格太郎も、感づいていた。
そんなある日、お勢が逢引きしている間、息子とかくれんぼをして例の長持ちの中に隠れた格太郎は、情事を思い出して悶々としていた。ところが、長持ちから出ようとした格太郎は、蓋の鍵が掛かってしまったと気付くが、中からは開けること出来ない。息子も格太郎を見つけることが出来ず、かくれんぼのことを忘れてしまった。夕暮れになり、書生との逢引きから戻って来たお勢は、長持ちの中に格太郎がいることに気付いて蓋を開けるが、再び閉めて鍵を掛け、殺してしまうのだ。
物語を読み終えた晶子は、お勢を擁護する発言をする。もし、長持ちの一件がなければ、ずっと肺病の夫の面倒を見て、若さを持て余すはずだ、という晶子。3人は、いつしか結婚という束縛と女の自由についての話を始めて―。
第8話「女生徒」
2009年3月7日放送
“白い女”に関する謎がさらに深まる中、晶子(吉瀬美智子)、藤尾(紺野まひる)、節子(高橋真唯)の三姉妹の話は、いつしか家計の問題になった。晶子によると、書籍の売り上げが落ち込んだため、収入が減り、草太郎(田中哲司)が残してくれたこの屋敷を売却することになるかもしれないのだ。
この事態を食い止めるため、草太郎の手紙類を発表したいという晶子。だが、これに激しく反発した節子は、晶子の話を最後まで聞かず、書庫から次の本を手にとって家を飛び出した。
草太郎のそろえた8冊目の本は、太宰治の『女生徒』だった。この本は、父親がいない思春期の女生徒の甘酸っぱい心象風景を描いた作品。人気のない夜の公園にやって来た節子は、ひとりで父親の死の謎を解こうと本を開いた。
眼鏡を掛けていることにコンプレックスを感じている女生徒(高橋真唯=二役)は、お年頃になったこともあり、様々な空想の世界で遊んでいた。庭で仕事をしている植木屋(栗原寛孝)に片思いをしてみたり、素敵な下着を付けて大人の女の雰囲気を楽しんだり―。電柱にぶつかってようやく現実の世界に引き戻された女生徒は、学校で美術の先生(松尾英太郎)にモデルを頼まれ、またまた空想の世界をさまよう。そして、最後に、亡き父のことを思い出し、美しく生きたい、と誓うのだ。
闇が白み始めた頃、家に戻った節子は、文庫版の『女生徒』を読んだらしい晶子に声を掛けられた。大きな出版社の社長に相談に乗ってもらっているという晶子は、節子に手紙の一件は3人で相談して決める、と告げる。これを聞いた節子は、涙を浮かべながら、誤解していたことを晶子に謝った。そして、3人は、お互いに力を合わせてこの家を守ろうと約束するが―。
第9話「にごりえ」
2009年3月14日放送
草太郎(田中哲司)の背後に見え隠れする“白い女”の正体が依然としてはっきりとしない中、晶子(吉瀬美智子)は、藤尾(紺野まひる)の妙な動きを気にしていた。藤尾の部屋を調べた晶子は、思わぬ書類を見つけて、ビックリ。まもなく、酔って上機嫌で帰宅した藤尾は、草太郎が残した本を手に取った。それは、女流作家・樋口一葉の『にごりえ』――貧しさから遊女となった女の辛い現実と壮絶な恋を描いた作品であった。
遊郭・菊の井の売れっ子遊女・お力(紺野まひる=二役)は、今日も馴染みの客・結城)の相手をしていた。結城は、遊女仲間もうらやむ上客で、いつかお力を身受けするかもしれない、との噂も流れる。もちろん、お力は、早くこの“華やかな地獄”から脱出したいのだが、かつて馴染みだった源七という客のことが忘れられなかった。妻子持ちではあったが、お力のことを心から愛してくれた源七。お力は、今は落ちぶれた源七が自分の様子を見に来ているのを知っていた。
ある日、お力は、結城が自分を単なる遊び相手としか考えていないと知り、愕然となる。遊女から足を洗えると思っていたお力は、希望を失い、教会で神に祈る。そんなお力を、源七は、結城との仲を誤解し嫉妬して銃撃。死ぬ間際のお力の言葉から、自分が愛されていたと気付いた源七は、後を追って自らの命を断つのだ。
晶子、藤尾、節子(高橋真唯)からは、この世では添い遂げられなかったお力と源七の恋についての様々な意見が飛び出す。そんな中、晶子は、独断で屋敷の資産計算を依頼していた藤尾を追及する。
第10話「藪の中」
2009年3月21日放送
藤尾(紺野まひる)の持っていた書類が、自分たちの屋敷の買い取りに関するものだと知り、不安を募らせる晶子(吉瀬美智子)。晶子が写真週刊誌の記者(和田成正)に草太郎(田中哲司)の手紙を売却しようとしている、と勘ぐる節子(高橋真唯)と藤尾。3人がそれぞれ疑心暗鬼となる中、秘密の書庫から超自然的な力で飛んできたのは、芥川龍之介の著した『藪の中』だった。
この本は、旅の女が山賊に、縛られた夫の前で暴行されるという出来事を基に展開する心の深層を描いた作品。気になって本を開いた晶子は、いつの間にか物語の中に引き込まれていった。
縛られて身動きの取れない夫・武弘の目の前で、山賊・多襄丸に暴行された真砂。まもなく、現場となった藪の中には、縄が解かれた状態の武弘の死体が発見される。物語は、武弘の死因に関しての様々な証言が飛び出すのだが、場所が藪の中とあって、何が真実なのか分からない。事故死なのか、刺殺なのか、それとも自殺なのか―。
晶子、藤尾、節子の3人は、それぞれ性格の異なる真砂となって、自分の思いを語り始める。やがて、妄想の中、3人の争点は、屋敷を巡る意見の対立となり、お互いの心の中の疑惑や不信感をさらけ出し、けなし合いを始めてしまう。
本を読み終えた3人は、なぜ草太郎が自分たちに『藪の中』を読ませたのか、首をひねった。一体、草太郎は、何を望んでいるのか。晶子、藤尾、節子の3人は、全ての答えが、残る最後の1冊の本に隠されているとにらんだ。
第11話「瓶詰地獄」~最終話~
2009年3月28日放送
屋敷の書斎で、それぞれ心の距離を表すように離れた場所に座った晶子(吉瀬美智子)、藤尾(紺野まひる)、節子(高橋真唯)の三姉妹。そんな3人が手にした最後の本は、夢野久作の書いた『瓶詰地獄』だった。
この本は、2人きりで無人島に漂着した仲のいい兄と妹が、成長するに従って互いの体を意識するようになり苦悩する様子を描いた作品。その内容が自分たちの状況と重なっていると感じた3人は、思わず黙りこくった。
そんな中、本棚から瓶に入った鍵が見つかった。それが地下倉庫に関係があるとにらんだ3人は、『あけるべからず』との貼り紙がある扉に鍵を差し込む。そして、そっと扉を開けて中に入り込んだ3人は、暗闇の中に浮かび上がる『白女 市川草太郎』と書かれた父親の筆跡の原稿用紙の束を見つけた。表紙に書かれた日付は、草太郎が死亡した日。この原稿は、草太郎の最後の作品であった。
草太郎(田中哲司)は、なぜ11冊の本を読ませる前に、この遺稿を自分たちに見せなかったのか。これを読めば全ての謎が解けると察した晶子は、藤尾、節子の前で原稿を読み始めた。
果たして、草太郎の謎の死の理由とは、3人の娘たちの母親、そして、“白い女”とは一体誰なのか。
草太郎の遺稿を読み進めるうちに、3人は、自分たちの母親の正体を知り、愕然となって―。