主題としてはミュシャには珍しく天体をモチーフとした連作である。すなわち「明けの明星」、「宵の明星」、「北極星」、それと「月」の4点であるが、いずれにしても月や星の見える時間帯でもあり、ミュシャにはめずらしく画面全体がほの暗いダークグレイに包まれている。《月》では冴え冴えとした三日月を背にした少女が、はにかむような表情で口に手を当てている。小さな星の輪がいくつも付いた衣裳の色は夜にふさわしく暗いが、これを中和するように彼女の頭部は美しい花輪で飾られている。ミュシャの他の作品同様、《月と星》でもそれぞれの人物はくっきりとした輪郭線でかたどられている。