第5章: Paris 1900 パリ万博と世紀末

トパーズルビーアメジストエメラルド

《宝石:トパーズ、ルビー、アメジスト、エメラルド》 1900年 カラーリトグラフ 67.2 x 30 cm (C)Mucha Trust 2013

トパーズ、ルビー、アメジスト、エメラルドの4点で1セットの宝石シリーズである。それぞれの画面には髪型も衣裳も異なる4人の美女が登場しているが、《ルビー》以外は手に宝石を持っているわけでもなく、したがってどの画面がどの宝石に相当するかは厳密には決めにくい。ただ、人物の下に添えられた花や植物の色がアメジストの紫だったり、エメラルドの緑だったりするのが手がかりにはなっている。《ルビー》の場合、女性が手にしたアクセサリーからも、またその前の赤い花からもこれがルビーであることは一目瞭然である。この頃のミュシャは有名な宝飾ブランドのフーケの仕事をしており、レストラン・マキシムのほぼ向かいにオープンした彼の本店のトータルデザインも担当した。このシリーズもこうした流れの中から生まれてきたものであろう。