数多くのスタジオジブリ作品の美術に携わってきた男鹿和雄。中でも美術監督を務めた「となりのトトロ」、「おもひでぽろぽろ」、「平成狸合戦ぽんぽこ」、「もののけ姫」においては、高畑、宮崎両監督と議論を交わし、その世界観を追及してきただけに、男鹿自身の意思と両監督の想いが刺激しあい、映画の素晴らしい舞台が誕生した。これらの作品は、三鷹の森ジブリ美術館で展示されている数点を除いて、スタジオジブリに関連するイベントにおいても一般に公開される機会は極めて少ない。この展覧会で初めて実現する、貴重なチャンスだ。
また、それらの作品の他にも、「千と千尋の神隠し」、「ハウルの動く城」、「ゲド戦記」など、最近の数多くの作品から、男鹿和雄が担当した背景画が展示される。
展示室では、主人公たちがいきいきと動いた映画の舞台が一堂に集まる。ジブリファンならずとも、その空間に居れば、年代を問わず、心地よく、幸せな体験が得られることは間違いない。
ここではアニメーション以外の場で評価される男鹿和雄の世界を観ることができる。女優吉永小百合からの協力依頼に応じて描いた「第二楽章」シリーズでは、原爆詩の朗読の傍らに在りながらも、やさしく、温かい絵が描かれた。絵本「ねずてん」(原作:山本素石)や、DVD・絵本「種山ヶ原の夜」(原作:宮沢賢治)では、原作のストーリーを効果的に伝えるため、どこか懐かしい民話の匂いを感じさせる画風にするなど、多様なチャレンジがなされている。その他、雑誌の表紙や山々を歩いて描いたスケッチなど、日本の四季を切り取ったさまざまな作品を展示。多彩な画風とテーマから、日本人の心に通じる数多くの風景画を通じて、男鹿和雄の情熱を、その場で体感することができる。