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最後の弁護人

2013年1月期 水曜ドラマ
ストーリー

第1話

子供の頃から弁護士に憧れていたものの夢叶わず銀行に就職した石田良子(須藤理彩)は、不良債権の取り立てをする調査課に異動になった。良子は、与えられたリストを元に債務者を一軒一軒周るが、全く成果なし。そんな良子が次にドアを叩いたのが、事務所開設資金を返済していない有働弁護士事務所だった――。

1Kのアパートで弁護士事務所を開いているのは、有働和明(阿部寛)。事務員を雇う余裕もない有働は、良子の債務返済の話を「金がない!」と即座に言い切る。想像していた弁護士像とは正反対の有働に、戸惑う良子。

しかしその時、電話が。電話の相手は、日本弁護士会職員の神崎美智子(浅野ゆう子)。美智子は、有働に殺人事件の弁護を依頼してきたのだ。話をそばで聞き、これで借金を返してもらえると喜ぶ良子。しかし、この依頼は国選弁護人の仕事。つまり、借金を返済するほどお金になるものではなかった。

事件が起こったのは、山村鉄工所という町工場。殺されたのは工場の従業員・友澤芳男(高杉瑞穂)。夜、バイクの音がしたのを不審に思った社長の山村清司(長門裕之)が工場に行き、そこで友澤の刺殺体を見つけたのだ。

現場近くの河原で凶器のナイフを発見した警察は、同じ従業員で前科がある赤倉俊哉(今井翼)の指紋を検出。さらに、事件直後、赤倉のものとよく似た帽子をかぶった男が現場から逃げるのを、たまたま通りかかったドライバーが目撃したことから、赤倉の逮捕、起訴に踏み切ったのだ。

有働が接見した拘置所内の赤倉は、「俺はやっていない!」と無実を主張。有働は、山村から話を聞き、事件現場を調査。いくつかの疑問点を見つける。

やがて、初公判の日。赤倉の言葉を信じた有働は、被告の無罪を主張した。これに対して、担当検事の沢登圭一郎(松重豊)は、血まみれのナイフを握りしめた赤倉を目撃した証人がいると自信たっぷりに話す。

そんな中、有働に反発しながらも調査を続けていた良子は、有働から犯罪者になってくれと頼まれる。

 

第2話

社内秘の文書を持ち出したため銀行をクビになった良子(須藤理彩)が、有働の事務所に「事務員になってあげる」といって押しかけてきた。事務所では、前回の裁判で晴れて無実が証明された赤倉(今井翼)がバイトを始めており、それまでひっそりしていた有働の周辺は急ににぎやかになった。

そんな有働の元に、美智子(浅野ゆう子)から、夫婦喧嘩から殺人未遂事件に発展した裁判の案件が持ち込まれた。この事件は、佐倉雅人という男が自宅で妻の冬美に包丁で斬りつけ、腕にケガをさせたというもの。警察と検察は、冬美の話、血染めの包丁を握りしめて家から出てきた佐倉を目撃した近所の住人の証言、及び、佐倉が家庭内暴力の常習者だったという情報から、逮捕、起訴に踏み切っていた。

有働が接見した佐倉は、開口一番「冬美がオレをはめた!」と息巻いた。そして、現場にいた10歳になる一人息子の悟が、真実を知っていると言い張った。佐倉と冬美は共に浮気をしており、家庭は崩壊寸前だったらしい。

有働は、さっそく悟に会って話を聞くが、悟は、「見たくなかったから見なかった。知っていても話さない」という。そして、両親の不仲の原因が自分にあると考える悟は、有働に「ぼくなんか、死んだほうがいい」とつぶやいた。そんな悟の言葉を耳にした有働は、思わず「なら、死ね」と一言。そばにいた良子は、10歳の子供に対する無神経な発言に怒り、有働をたしなめる。だが、この有働の一言が、まもなく、思わぬ騒ぎを起こした。

翌日、警察に、爆薬こそ入っていないものの、本物の時限爆弾が届けられた。一緒に添えられていた手紙は、有働にいわれたから死ぬ、との自殺予告の内容。警察は、すぐさま有働を呼びつけると共に、悟の部屋を捜査し、悟自身が爆弾を作ったと確認した。

有働は、佐倉と冬美に会って、悟が行きそうな場所を考えるが、見当がつかない。再び悟の部屋を調べた有働は、かつて悟が佐倉、冬美と一緒にピクニックに行った時に描いた一枚の絵に注目して――。

 

第3話

有働が今回担当した案件は、北浦希(酒井美紀)という女が被告となった窃盗事件であった。事件は、とあるマンションに侵入した性別不明の窃盗犯が帰ってきた住人を突き飛ばして逃走した、というもの。警察は、現場に落ちていた免許証から希を犯人と特定。希が400万円もの借金を抱えていたことから、逮捕、起訴に踏み切ったのだ。拘置所で接見した有働に対し、事件当時独りで部屋にいた、という希は、アリバイこそなかったが無罪を主張した。

さっそく、現場に行った有働は、犯人のアンバランスな“仕事”の仕方に首をひねった。窃盗のターゲットの絞り方、ガムテープを使って窓ガラスが飛び散らないようにして侵入するやり方は、鮮やかな手口なのだが、犯人は免許証を落とすというプロにはあるまじきミスを犯しているのだ。

そんな中、有働の知人で前科132犯の元大泥棒・花岡清十郎(大滝秀治)が有働弁護士事務所ににひょっこり現れ、なぜか調査に同行する。ガムテープの貼り方から、犯人がノミケンこと小須田健三(高橋保雄)だと断定する花岡。有働は、良子(須藤理彩)と一緒にドヤ街を捜索するが、小須田を発見した時には、既にダンボールハウスの中で刺殺されていた。

ところが、有働は、小須田殺しを担当した柴田刑事(金田明夫)から、思わぬ情報を知らされた。実は、少し前、資産家の老婦人を狙った強盗殺人事件が発生したのだが、小須田の上着から、被害者の血痕が付着した凶器が見つかったのだ。警察は、小須田が仲間に殺されたと見て、共犯者の捜索に全力を上げるらしい。だが、老婦人殺しと、例の窃盗事件が、同じ日の同じ時刻に起きていたと知った有働は、ア然。つまり、老婦人殺しが小須田の仕業だとすると、希の事件の真犯人は、小須田ではないことになるからだ。

第一回の公判で、検察側は、事件発生当時、希の部屋を訪ねたというホストクラブのホスト・前島昇(末吉宏司)を証人として召喚した。この前島の証言で、事件当時部屋にいたと証言していた希のアリバイは、もろくも崩れる。希の借金は、すべてこの前島に入れ込んで作ったものだったのだ。前島なら希の免許証を手に入れられると見た有働は、空き巣を働いたのが前島ではないかと追及する。そのやりとりを見ていた希は、前島を庇うかのように自分が空き巣を働いたと自供してしまう。

だが、事件にウラがあるとにらんだ有働は、たまたま「大きな嘘を隠すために、あえて小さな嘘をつく」と言った花岡の言葉から、老婦人殺しの現場を検証。犯人が侵入するために壊した窓ガラスを見た結果、真犯人が構築した恐るべきトリックに気付いた。

 

第4話

有働が強盗殺人の罪で起訴された被告人・下川正雄(山下徹大)の弁護を引き受けた矢先、弁護士事務所に被害者の息子・滝田光一(モロ師岡)が現れ、「下川は無罪だ」と告げる。この男は、自分こそ父・滝田重光(山田吾一)を殺した真犯人だと有働に打ち明けたのだ。

事件は、会社社長である重光の自宅マンションで発生した。たまたま、部屋の前を通りかかった一人のOLが、ドアチェーンを壊して内部に侵入する下川を発見して110番通報。血まみれで部屋から飛び出してきた下川は、逃走したものの、まもなく逮捕されていた。

検証によると、重光は部屋の中央で絶命していた。下川は、空き巣をする目的で侵入しただけ、と無罪を主張。衣服に付着していた血痕に関しては、室内で転んだため、と供述していた。だが、現場となった部屋の鍵が全て内側から掛けられていたこと、事件後すぐに人が集まり後から部屋の外に出ることなど不可能だったことから、警察は下川を犯人と断定したのだ。

一方、自分こそ真犯人だと明かした光一は、有働に殺人の経緯を説明した。それによると、光一は、重光と話をするために部屋を訪ね、ドアのブザーを押した後に記憶がなくなり、気が付いた時は、近くの公園で血まみれの手を洗っていたのだという。父親を殺した感触が手に残っていると真顔でいう光一だが、証明できる事実はなかった。

やがて行われた公判は、検察側の圧倒的有利な状況で幕を開けた。有働は無罪を主張したものの、下川の衣服の血痕、目撃証言、さらに下川が多額の借金をしていたという動機も加わって、有罪の判決が出る可能性が極めて高い。

まもなく、裁判官を交えた現場での状況説明に立ち会った有働は、玄関のドアノブや、デスクの引き出しに血痕を確認。柴田刑事(金田明夫)の話から、犯人に刺された後も、重光が5秒から10秒程動いていた事実を知った。さらに、部屋の灰皿の中に、何かの燃えカスを見つけた有働は、下川が現場に侵入していた時間などから、それが下川以外の仕業だとにらんだ。

しかし、事件は急展開。罪悪感に苛まれた光一が、"自分が重光を殺した"との遺書を残して自殺したのだ。光一が重光を殺したことは確信した有働だが、そこには重要な事実が隠されていた。推理を巡らせた有働は、ついに事件の真相を突き止め――。

 

第5話

有働が今回担当した被告・熊川麻美は、トゲのある言動を繰り返すことで、日本中から嫌われている25歳の女であった。麻美の容疑は殺人。検察側は、生活苦のシングルマザーの麻美が、保険金目当てに、1歳にもならない我が子を乳母車ごと崖から海に蹴落とした、と主張していた。

事件の現場は、月夜の海辺の岸壁だった。たまたま、天体観測に来ていた多田(須永祥之)という男が、女が乳母車を海に蹴落とすのを目撃して、警察に通報。18時間後に、乳母車は発見されたものの、乗っていた麻美の子供は波に飲まれて行方不明になったのだ。

接見した有働に対し、麻美は、息子を海に連れて行きかくれんぼをしていた、と供述。有働は、だれかれかまわず毒づく麻美に動じることなく、「殺していない」という言葉を信じ、『被告無実』で闘うことを固めた。

この事件には、いくつかの疑問点があった。麻美が悪態をつきながら「無実を信じてくれなくてもいい」といった点。真っ暗の海で0歳児の子供とかくれんぼをした理由。乳母車を手ではなく足で蹴り落としたこと――。

第一回公判で、有働は、検察側の主張が全て状況証拠のみの憶測に過ぎない、と無罪を主張。弁護士事務所への嫌がらせが殺到する逆風の中、有働は、麻美から養育費を請求されていた、子供の父親で不倫相手のサラリーマン・川上(中根徹)ら関係者から話を聞いた。実は、多田の証言によると、犯人は左足で乳母車を蹴っている。つまり、犯人は左利きなのだ。だが、川上を含め事件関係者は、麻美を除いて全て右利きであった。

第二回公判で、検察側は状況証拠を強化するために、麻美の家に10度以上も足を運んだという児童相談所職員・福西怜子(山下容莉枝)を喚問した。虐待の現場を目撃したという怜子は、麻美が行哉を殺す権利がある、と話していたと証言。これを聞き逆上した麻美は、怜子が子供を産めない身体だと暴露し、退廷を命じられてしまう。

麻美に対する世の中のヒステリックな憎しみがエスカレートする中、有働と一緒にテレビに写った良子(須藤理彩)が暴漢に襲われてしまう。美智子(浅野ゆう子)が柴田(金田明夫)にボディガードを頼んでいたため、良子は軽症ですんだ。しかし、追いつめられた有働は焦りを覚える。

しかし、ある事実に着目した有働は、事件を解く手がかりを見つける。いよいよ第三回目の公判。有働が提示した証拠とは――。

 

第6話

聖和女子高校の校内で、生徒が殺される事件が発生。有働は、この事件の容疑者として起訴された同校教師で、陸上部顧問・矢崎時雄(羽場裕一)の弁護を国選で担当することになった。

事件が発生したのは、夜の校舎の屋上。矢崎の教え子で、陸上部員の水川留美(佐藤めぐみ)が、その屋上から転落して死亡した。右腕を切られたまま現場から逃走した矢崎に着目した警察は、屋上の手すりからその指紋を検出したこと、衣服から留美の血液が検出されたことなどから、矢崎の逮捕に踏み切ったのだ。

だが、接見した有働に対し、矢崎は無実を主張。事件前後の状況に関しては、生徒の誰かに屋上に呼び出されて、いきなり背後から切りつけられたために動転し、現場から逃げ出した、と話した。留美は、春のインターハイの女子1万メートルで3連覇を狙うエース。矢崎は、素直で努力家で才能のある留美のような選手を殺すはずがない、という。

ところが、第一回公判で、検察側の沢登(松重豊)は、産婦人科のカルテを手に、思わぬ事実を公表した。矢崎は恋愛関係にあった留美を妊娠させ、さらには中絶までさせていたというのだ。そして、沢登は、矢崎との付き合いをこと細かく書いた留美の日記を紹介、写真も残っている、と話した。筆跡鑑定の結果、日記は留美にものに間違いない。

これに対し、矢崎は、「絶対に写真は撮らせなかった」とポロリ。恋愛関係を肯定するかのような矢崎の発言で状況が極めて悪くなる中、沢登は、留美の日記に書いてあった核心部を読み上げた。「私は、同じ陸上部の矢崎先生に殺される」――。これを傍聴席で聴いて興奮した留美の父親・水川茂(國村隼)が暴れたため、法廷内は大混乱に陥った。

まもなく、矢崎の言葉から、矢崎が他の生徒と関係があったと気付いた有働は、再度現場に戻って関係者の話を聞いた。留美のライバルだった北野友恵(邑野未亜)は、矢崎が留美と付き合っていた、と断言し、激しい怒りの表情を見せる。ところが、有働がこの友恵を証人として喚問したところ、思わぬ事態になって――。

 

第7話

有働(阿部寛)が証人として召喚した北野友恵(邑野未亜)が裁判所の証人控え室で刺殺されたことから、事件は新たな局面を迎えた。自分の呼んだ証人が殺されたことで有働は大きな衝撃を受ける。現場の状況から判断すると、友恵は犯人と顔見知り。だが、有働は、その犯人の顔が全く見えてこなかった。

調査の手がかりは半年に渡って綴られた最初の被害者・水川留美の日記しかない。これを丹念に分析した有働らが注目したのは、台風の豪雨の中でトレーニングをしたことになっている部分。留美の才能や将来性に大きな期待を抱いていた元アスリートの父親・茂(國村隼)は、悪天候で娘が練習をするはずがないと言う。有働たちはなぜ留美がそんな間違いを書いたのかと首をひねる。

有働は、留美、友恵と仲良し3人組だった同じ陸上部の吉田知佳(加賀美早紀)からも話を聞いた。涙を浮かべ、有働の一言一言に激しく反応する知佳。有働はそんな表情を見て、知佳が事件の一部始終を知っているとにらんだ。

まもなく、病院関係を調べた良子が、思わぬ事実を掴んだ。なんと友恵は練習のしすぎが原因でアキレス腱を傷め、トップアスリートとしての将来は全く望めない状況だったのだ。

良子と赤倉の話によると、友恵が病院に通い始めたのは、奇しくも留美が日記を書き始めたのと同じ6ヶ月前。このことを知った有働は、折からパチンコの景品を抱えて戻ってきた花岡(大滝秀治)の“交換”という一言から、3人の女子高生の考えた悲しい復讐のシナリオに気付いた。そして、良子には友恵が通っていた整形外科と留美が中絶手術を受けた産婦人科に再度確認に行かせ、赤倉には知佳と茂の証人喚問の手続きをするよう命じた。

公判の当日――。良子は、開廷が間近に迫った裁判所に有働が姿を見せていないことから、焦りの色を隠せなかった。実は前日、知佳が姿をくらましたと知った有働は、赤倉と一緒に捜していたのだ。公判に間に合わないかと思われた時、なんと弁護人として法廷に立ったのは、弁護士の資格がある美智子(浅野ゆう子)。美智子が時間稼ぎをする中、ようやく知佳を見つけた有働が法廷に駆け込んできて――。

 

第8話

灯油を買うお金すらなく、閉鎖寸前に追い込まれた有働の事務所に、また美智子(浅野ゆう子)から“国選”の依頼が入った。今回の裁判の被告は、殺人の容疑で起訴された中野俊人(村田充)という男。被害者・岸谷千穂は、日本法曹界の名門・山縣法律事務所の所長で次期弁護士会会長ともいわれる山縣修一のお気に入りの秘書。つまり、普通の弁護士にはまず引き受けてもらえない案件なのだ。依頼を断りきれない有働は、これが最後の裁判になることを覚悟の上で調査に臨んだ。

事件が発生した場所は、千穂の自宅マンション内。千穂は鈍器で頭部を殴られて死亡していた。警察は、死体の上にあった毛髪から、以前、千穂に対するストーカー行為で逮捕され罰金刑を受けた中野を特定。中野にアリバイがなかったことから、逮捕、起訴に踏み切っていた。だが、有働が面会した中野は容疑を完全否認した。2年前のストーカー事件の際に千穂の弁護士だった山縣に警告された中野は、それ以降、会うどころか電話もしていないというのだ。

そんな中、周辺調査をした有働らが聞きつけたのは、千穂が山縣の愛人だったという噂。そして、問題の山縣に会った有働は、その口から出た驚愕の言葉に思わず自分の耳を疑った。「彼女は、私が殺した。しかし、自首するつもりはない」――なんと山縣は、自分が千穂殺しの犯人だと明かし、自分の罪は中野に着てもらうと言い切ったのだ。自分には鉄壁のアリバイがあり、そのアリバイには特別の魔法が掛けられている、とうそぶく山縣。有働は、この大物の挑戦を必ず打ち破ってやろうと決意を新にした。

貞淑そうな妻・静香(田島令子)と暮らしている山縣のアリバイというのは、事件発生当時、区民ホールで講演会をしていたという事実であった。証人は、会場に詰め掛けた多数の聴衆。関係者の話を総合すると、会場にいた山縣が抜け出して千穂を殺すことは、完全に不可能だった。

やがて始まった公判で、証人席に立った山縣は、千穂が中野のストーカー行為に苦しんでいた事実などを証言し始めた。そして、講演会直前に携帯に千穂から連絡が入った、とさりげなく自分のアリバイを強化する。このまま判決になれば、弁護側にまず勝ち目はない状況であった。

アリバイの謎さえ解ければ、山縣のクロを立証できるのだが、そのヒントさえ見つからない。そんな中、花岡(大滝秀治)がやった手品を見ていた有働は、山縣が魔法の粉を振り掛けるように自分らを惑わせたある陽動作戦に気付いて――。

 

第9話

夜の駐車場でカップルを狙った少年たちによる襲撃事件が発生した。被害者は、会社員の秋葉寛人(岡本光太郎)と同僚で恋人の荻野みゆき(純名りさ)。匿名の目撃者からの110番通報で出動した警察は、2人から50万円入りのバッグを奪ったグループ主犯格の17歳の少年・佐藤祐樹(森山未來)を強盗傷害の容疑で逮捕。被害者の秋葉が死亡したとの連絡を受けた警察は、佐藤に全く反省の様子が見られなかったことなどから、家裁ではなく刑事裁判が相当との但し書を付けて送検した――。

有働が佐藤の国選弁護を受けたと知った良子と赤倉は、最初から意気が上がらなかった。佐藤が被害者らを襲ったのが事実なら、バッグを奪ったのも事実。さらに襲われた被害者の秋葉が死亡している。全く同情の余地がない被告の弁護をすることは、被害者はもちろん家族や関係者の神経を逆なでする行為に思えたのだ。有働らが面会した佐藤は、予想通り自分の罪を全く反省していなかった。

有働らがまず話を聞いたのはみゆきだった。匿名の目撃者は、カップルの男の方を鉄パイプで何度も殴りつけていると通報してきたが、佐藤は1回しか殴っていないという。有働はこの事実を確認したかったのだ。だが、みゆきは、殴られて気を失っていたため、詳しいことはまるで覚えていないと言う。

有働は、佐藤の犯行を確信したものの、なんと第一回公判で被告の無罪を主張。違法捜査によって入手された証拠のため、検察側の証拠は全て認められない、というのだ。「無実ではないが無罪だ」という有働の言葉に、検察の沢登(松重豊)は猛反発。そして、良子、赤倉、美智子(浅野ゆう子)も有働のやり方にいら立つ。弁護を引き受けたからには、無罪放免を目指して全力を尽くすという有働。だが、良子は、それまで正義の味方だと信じてきた弁護士という職業に幻滅を感じ、赤倉も転職することさえ考え始めた。

そんな空気を痛いほど感じながら現場に戻った有働は、ひょんなことから匿名の110番通報の重大な矛盾に気付く。さらに秋葉の殺害に、それまで秋葉の恋人というふれ込みだったさゆりが絡んでいるとにらみ、良子と赤倉にその周辺調査を指示して――。

 

最終話

美智子から「吉野一臣が、また人を殺した」との連絡を受けた有働は、その吉野が自分に弁護を依頼していると知り言葉を失った。

実は10年前、吉野は妻子を瀬戸浩二(中野英雄)という男に殺された。この弁護を担当した有働は、検察側の捜査の違法性を主張して有罪の証拠を次々と退け、100パーセント真犯人だった瀬戸を無罪にしてしまった。これを逆恨みした吉野は、有働の妻で、美智子の妹でもある百合を殺害して有罪判決を受けて服役。模範囚として仮出所した吉野は、その後すぐに偽名を使って暮らしていた瀬戸を見つけ出し殺害したのだ。

接見した有働に、吉野は「依頼人がどんな人間でも、弁護を引き受けた以上無罪獲得のために全力を尽くす」とかつて有働が言った言葉を引き合いに出し、今度は自分に対してそれを証明してみろと言った。有働は当然のように全力で弁護すると答える。良子や赤倉は、自分の妻を殺した男のために、有働がなぜそこまで弁護士としての自分を貫こうとするのか分からない。ちょうど、良子にはお見合いが、赤倉には正社員として雇ってくれるという話がきていた。弁護士という仕事に幻滅した2人は、有働弁護士事務所を出ることを考えはじめる。

第一回公判で、有働は被告・吉野の無罪を主張した。これを聞いた検察側はもちろん妹を殺された美智子、百合と仲が良かった花岡(大滝秀治)など全員がア然。吉野は死刑を覚悟しているかのように「今なら、あなたは合法的に私を殺せる」と有働を挑発。だが有働は、凶器となったナイフの入手経路、凶器から検出された瀬戸の指紋のことなどについて吉野を質す。そして、事件直後に警察に掛かった無言の110番通報についても何か引っかかりを感じていた。

公判の後吉野は、「全てはあなた次第。私を殺してください」と有働に訴える。裁判がこのまま進めば、吉野の有罪は確実な状況。有働が無実の主張を取り下げれば、すぐにでも吉野の死刑は決まりそうであった。

そんな中、無言の通報者が掛けた公衆電話を調べていた有働は、そこに姿を見せた柴田刑事(金田明夫)から、ある重要な情報をもらう。それをヒントに、有働は再び推理を巡らせて――。

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