【アトランタ五輪 城彰二】「マイアミの奇跡」超個性派集団が1つになった「徹底」と「野心」城彰二がパリ世代に伝えたいこと
4、5月にパリ五輪アジア最終予選を控え、サッカーU-23日本代表は22日に京都でマリとの強化試合に臨みます。1996年アトランタ五輪でブラジルを破り「マイアミの奇跡」の立役者となった元日本代表FW城彰二さんに、ブラジル戦勝利の裏にあった作戦や選手たちの思い、そして、自分たちが成しえなかった金メダルを目指すパリ世代の選手たちに伝えたい思いを伺いました。
■分析で見出した最強ブラジル唯一の穴「何かが起こるとすればゴールキーパーとディフェンスの連係」
アトランタ五輪の初戦の相手がブラジルに決まり「とんでもない国と戦う。これはやばいなと正直思った」という城さん。当時のブラジルは、五輪の金メダルが悲願で、1994年W杯優勝メンバーのFWベベットやDFアウダイールをオーバーエージで招集するなど、総力を挙げて優勝を狙っていました。それでも、日本は徹底した分析、スカウティングでブラジルの唯一の「穴」を見出していたと言います。
城「オーバーエージのDFアウダイール選手とGKジダ選手の連係が良くないというデータがありました。何かが起こるとすれば、そこをつくしかないという分析だったので、サイドにボールが入った瞬間に、早めにクロスを入れる、私はとにかくゴールキーパーとディフェンスの間に走り込む、という作戦を徹底していました」
試合中、ゴールキーパーとディフェンスの間をとにかく狙っていたという城さん。後半27分に生まれた歴史的ゴールの直前もその狙いを忠実に守っていたと振り返ります。
城「左サイドの路木選手にボールが出た瞬間にやっぱり走り出して、ゴールキーパーとディフェンダーの間に走り込んで、いいクロスが入ってきて先にボールに触りたかったんだけど、ちょっと届かなくて。自分が決めても別にどっちでもよかったというか、とにかくこのブラジルからゴールを奪えたというのが、とにかく衝撃的だった」
路木龍次選手のクロスボールに対処しようとしたDFアウダイール選手とGKジダ選手が交錯し、こぼれたボールをMF伊東輝悦選手が押し込み、日本が先制点を奪います。それが決勝点となりブラジルに勝利した日本。徹底した分析とチームの狙いを全員で徹底したことで実を結んだ歴史的勝利でした。
■狙いの徹底で生まれた共通意識「奇跡と思われるのは当然、奇跡に近いかもしれないけど、分析力と戦う姿勢でチームが1つになった結果」
城彰二さん、前園真聖さん、中田英寿さんら、世代のスター選手が集結し、個性的な選手が揃っていたアトランタ五輪日本代表。ブラジルと戦う前、どんな試合になってもいいから攻めたい攻撃陣と、しっかり守備をしてから組み立てたい守備陣とで意見がぶつかることもあったそうです。それでもブラジルの唯一の「穴」を狙う姿勢がチームを1つにしたと城さんは話します。
城「とにかく狙いを徹底して戦おう、という共通意識、戦う姿勢が生まれてチームが1つになったと思います。奇跡と思われるのは当然、奇跡と言われても仕方が無いし、奇跡に近いかもしれないけど、分析力と戦う姿勢でチームが1つになって結果がついてきたんだと思います」
■超個性派メンバーを1つにした「野心」悲願の金メダルを目指すパリ五輪世代に伝えたいこと
ブラジルを相手にしても動じず、狙いのサッカーを徹底できた要因として、個性的な選手たちが共通して持っていた「野心」があったと城さんは振り返ります。日本史上初の金メダルを目指すパリ世代のメンバーにも「野心」を持って戦って欲しいとエールを送ります。
城「当時のメンバーは、1試合でも多く戦いたい、もっと上にいきたい、という思いがとにかく強かった。フル代表より強いとメディアに言い放ったこともありましたし、日本代表を背負っていくのは僕たちだという野心が強かったから、ブラジル相手でも動じることはありませんでした。パリ世代の選手たちも、これから自分たちが日本を背負っていくんだ、俺たちがフル代表に食い込んでいくんだ、という気持ちで全員が臨んで欲しいです。デンマークでプレーする鈴木唯人選手(ブレンビー)、ベルギーでプレーする藤田譲瑠チマ選手(シントトロイデン)をはじめ、個の能力はものすごく高いです。若くして海外を経験している選手もいるし、Jリーグで活躍している選手もいて、潜在能力は僕たちと比べて、計り知れないくらい上。何かのきっかけでチームが1つになった時に、とてつもない力を発揮するんじゃないかという期待を持っています」