DASH海岸 ~海の森プロジェクト~
東京湾・工業地帯の一角のDASH海岸に、シンタローが初めてやって来た!
DASH海岸の始まりは2009年。シンタローがまだ11歳の時の事。
ゴミばかりで砂もなかった海に、14年かけて砂600トン、岩320トンを入れた。
絶滅危惧種のニホンウナギを筆頭に、魚やエビ・カニなどの甲殻類、アサリなどの貝類、軟体動物など、今や135種類。
初DASH海岸のシンタローが、日々の調査に参加。この日行ったのは、押し網での生物調査。
網に入ったのは、キレイな砂地が大好きなエビジャコと、ニョロニョロのヨウジウオの仲間のガンテンイシヨウジ。チャームポイントは、小さく上向きの口。
一見、ニョロニョロしているので柔らかそうだが、全身は鎧のような硬く進化した皮で覆われている。
「ずっと見てられますね」「水族館じゃなくて野生ですからね。工業地帯の真ん中とは思えない」
細長いニョロニョロに続いて発見したのは、平べったい体のイシガレイの子ども。
その名前の由来は、石のような硬い板(骨板)ができること。
するとシンタロー「コレ、去年あそこで会いましたよね」
それは1年前、東京湾最大の天然干潟の盤洲干潟でシンタローが初めて干潟調査に参加した時のこと。
イシガレイは、フカフカな砂地に棲むが、戦後の埋め立てや開発で砂地がなくなり、その数が激減。
「すごい。あの盤洲干潟と同じ魚がいる。DASH海岸は良い干潟ってことですね」
「イシガレイは浅瀬やったけど、深場はもっと面白い。念願のアレがある」と城島。
城島が言う「アレ」とは、ワカメのこと。
東京湾でも、かつてはボーボーに生えていたワカメたちは、戦後の埋め立てや開発で激減。
その姿を蘇らせるため、869日かけた地道なプロジェクトが!
始まりは2020年の冬。種糸(ワカメの赤ちゃんを生やしたロープ)をイカダに吊るして育成開始。
2021年には、大きく育ったワカメから種を取り出し、1トンもの岩を海底に積んで作り上げた
『海底山脈横浜アルプス』に、ワカメの種(胞子)を撒き、山いっぱいのワカメの林を目指した。
そして2022年の春には、50本ものもさもさワカメが!
そこには、メバルなどの海藻を愛する生き物たちが。
そして、3年目は「海の森プロジェクト、今年が正念場ですね」
それから夏を経て、季節は秋。
『横浜アルプス』から、ワカメの種が広がり、石などに定着しているかどうか確認。
DASH海岸の様々な箇所から石を集め、顕微鏡で見てみると…「あっ!いました!」
調べた結果、各所の石に、0.1㎜のワカメの赤ちゃんを確認!
「あと、気になるのは珪藻類。このままだとワカメがやられそう」
ワカメの赤ちゃんはフカフカの藻の布団で熟睡中。眠りから覚めて大きくなるには、光の刺激が必要。
しかし、分厚い藻が被さったままだと大きくなれず、いずれ死んでしまう可能性も。
そこで、栽培開始から684日。「清掃員の方がそろそろ来てくれると嬉しい」城島が言う生き物がやって来ていないかを調査すると…「いた!フレリトゲアメフラシ!」
歯舌と呼ばれるおろし金のようなギザギザを持ち、前後に動かし藻を削り取る、“海の王蟲"。
ワカメの赤ちゃんを覆う藻を食べ、日光が当たるようにしてくれる。
しかも、1mmにも満たない歯舌では石の窪みに隠れる赤ちゃんには届かない。まさにワカメ専属清掃係。
「今年もよろしくお願いします!でも、今年は結構守備範囲広いですよね」
去年に比べて、清掃範囲は20倍以上。どれだけフレリがペロペロしても終わらなさそう…。
だが、2週間後、まさかの事態が!
「あー!フレリがいっぱいいますね」「もしかしたら婚活パーティーの会場に向かってるのかも」
迷いなく一方向に向かっている。その海の王蟲たちが向かう先には…「こんなにいっぱいいるの!?」
集まったフレリ達は交尾中。アメフラシは、頭にオスの生殖器、背中にメスの生殖器と、一匹で両方の機能「雌雄同体」であるため、列車の連結のようにひっつき、高さ30cmフレリタワーができる時も。
しかも、粘液の中にフェロモンが含まれているといわれ、日中は各自好きな場所で餌を食べ、夕方になると粘液を出して集合して交尾をし、朝にはきっちり解散するという。
と、その近くにはもう「ちゃんと産卵してくれましたよ。いわゆる、アメフラシの“海そうめん"」
アメフラシの卵は、まさに見た目がそうめんのような見た目から、海そうめんと呼ばれる。
口の下側から、1mにも及ぶ長いチューブを出し、卵はその中に。1塊で約8300万粒あるとも言われる。
「無事に生まれて欲しいなあ。ここからアメフラシの子どもたちが増えてほしい」
そして1か月後の栽培開始から754日目。ワカメが眠りから覚める時期になると、推定2.5㎝のフレリの赤ちゃんたちが。「こんなに小さいんだ!かわいいー!」
大増員のフレリ軍団が各所で藻を食べてくれたおかげか、栽培開始から780日目の12月には、『横浜アルプス』だけではなく、DASH海岸の各所に小さなワカメが。
海の森になるためには、ワカメ全員に育ってもらう必要が。
そこで、DASH村の知恵で。カキ殻を砕いて海へ撒く。「天然の栄養補給を」
カキ殻には、ワカメが好きな窒素・リンがたっぷり。「あとは、水温が10℃切るとぐんぐん伸び始める」
そして2週間後の栽培開始から802日目。関東に雪が降り、水温は10℃。
栽培開始から810日後、城島愛用の水中ドローンでワカメたちを見てみると…
「すごく生えてる!」「鬱蒼としてる。葉っぱの色も濃くていい」
ワカメの周りには、メバルの子どもたちの群れも。
そして、太陽をいっぱい浴びたワカメは、プロジェクト開始から869日目。
シンタローと共に、観測イカダ周辺を調査。「でかっ!これワカメですか!?」
大きく立派に育った、DASH海岸3代目ワカメに、シンタローも驚き。
沖合の海底もワカメでびっしり。「黒く見えるの、全部ワカメ」
育ったワカメ、推定800株!
そして、ワカメにくっついていた生き物が…「盤洲干潟で見たやつ!…ワレカラ!」
ワレカラは、一年前の盤洲干潟でアマモの中でも発見した、見た目が似ていることから“海のバルタン星人"とも呼ばれる甲殻類。
「ワレカラがいると、他の生き物が食べに来る」
ワレカラを求めて来る奴らを調査するため、3日前に仕掛けていた網を引き上げてみるとカサゴが!
江戸時代、その勇ましい姿が武士に好まれ、端午の節句に飾られた縁起の良い魚。
大物で脂が乗れば、築地場外では1匹2500円!
海藻がたっぷり生えた岩場に住み着き、エサが来ると、顔を出してガブリと食いつく。
ワカメについたワレカラを狙い、やって来たか?つまり、海の森に生き物の生態系が!
そして確認したいのが…「最後の調査行きましょうか」「味から環境を知れる」
調査用に8株を収穫し、早速新鮮とれたての生ワカメをシンタローがガブリ。
「野菜みたい。シャキシャキして」と、城島らが思っていたリアクションとは違っていた。
というのも、生のワカメには、激渋成分タンニンが含まれており、本来ならかなりのえぐみがあるはず。
試しに城島も食べてみるが、やっぱり平気で「DASH島で鍛えられている。耐性ができてる」
ちなみにこのワカメが特別なのではなく、桝が食べるとやっぱりえぐかった。
一般人の桝も美味しく食べられる様に…「早速ワカメ料理を!」
茎、葉、メカブと部位ごとに切り分け、えぐみ対策に茹でる。
漁師さんが大きな窯でワカメを茹でる光景は、日本の春の風物詩。
80度以上で細胞が壊れ、タンニンがお湯に溶け出すと言われる。茹でる時は、海水と同じ塩分濃度にするため、水1リットルに対し、塩大さじ2杯入れるのがポイント。
こうして売られる春の新物が新ワカメ。熱々を、ポン酢につけて頂くと…「超美味しい!めっちゃうまい」
美味しいということは、DASH海岸が良い環境であるという事の証。
葉は8秒、茎は50秒、メカブは80秒それぞれ湯通しし、ワカメ料理を!
まず、一品目は、『ミニワカメピザ』!
餃子の皮をピザ生地にし、ピザソースを塗った上に、水気をとったワカメ、チーズ、シラスをのせ、香りづけのオリーブオイルをかけ、フライパンの上で焼いたら完成!
「美味しい!ワカメの食感をちゃんと感じますよ!」「これ家でやろう!シャキシャキ!美味しい!」
二品目は、DASH海岸でワカメ料理といえばの人気メニュー!『ワカメ焼き飯 2023Ver』
ごま油でニンニクを炒め、そこに大きめに刻んだ茎ワカメ、さいの目に切った葉と茎を投入。
表面をカリッとさせたら、卵混ぜご飯をくわえて、一気に炒め、粗挽き胡椒で味付けして完成!
「食感が良いですね!ワカメの味が濃い!」「旨味がじゅわ~!」
城島が『チャーハン』を作っている間に、木村さんとシンタローが作っていた三品目は『メカブの味噌汁』!
メカブを細かく刻み、ネバネバに。この粘り成分は、免疫力を高めたり、ウィルスの増殖を抑える働きを持つフコイダンという成分。昆布と鰹節でとった出汁に、豆味噌を溶いて、刻んだメカブを入れたら完成!
「とろみがいい!メカブの風味がすごい!」「これは美味しい!メカブONLY! LOVE YOU ONLY!」
全員ペロリと完食!
「来年も、ワカメがどんどん広がってくれると良いですね!」「楽しみだ!」
「来年は、違う海藻にもチャレンジしましょうよ!」
海の森づくりはまだまだこれからも!