夏にヒメジョオンが咲き乱れたように、秋は犬蓼が咲き乱れている。
咲くという表現に少し違和感があるほど、赤い花は小さく、別名「赤まんま(赤飯)」とも呼ばれるそうだ。湿気の多い場所を好むこの犬蓼は、水田を囲む様に咲き、冷夏で元気のない稲を励ましているようにも見える。
そんな心優しい犬蓼。そもそも犬のつく植物は食べられないことが多い。犬胡麻、犬ナズナ、犬ヒエ、犬ガラシ、犬ワラビ。これら全て食べられない。食べられないからと言って、すべて「犬」を付けて呼ばれるのは可愛そうだと思ったけれど、それも北登に失礼だ。


夏に収穫した小麦。冷夏の被害も殆どなく、例年通りの収穫となった。
今年は、その小麦で明雄さんも懐かしいという麦飴に挑戦。砂糖を一切使わない麦飴は、麦芽から出る素朴な甘さで美味しかったけれど、割り箸で食べるのがどうも慣れなくて食べにくかった。明雄さんの話だと、昔は甘いお菓子というものがなく、麦飴をつくってもらうのが、すごく楽しみだったそうだ。明雄さんや孝子さんたちも子供の頃、こんな風にこの飴を味わっていたのかと思うと、楽しくなってきた。普段から驚かされ、尊敬させられる先人たちを少し身近に感じることができた。


約1ヶ月前の十五夜の月と同じく、見事な十三夜の月。月こそ変化はないけれど、気温がグンと下がり、かなり着込まないとゆっくり見ていられない。ススキも十五夜の時より多くなって、月明かりで出来た影が風に揺れるたび秋が深まるのを実感できた。

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