以前からいただいていた話で、既に決まっていたことなのに、最後の最後まで迷うことと
なった。

ところどころにまだ雪の残る3月に生まれ、はや半年が過ぎた。ずっと一緒にいて、ずっと世話してきた。しかし、今思えば、世話をしていたというより、僕の方が彼らを見て学ばせてもらっていたような気がする。

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初めてのものばかりに囲まれながらも、その旺盛な好奇心で触れて知って、克服し、大きく成長していく姿は同じような状況にあった僕にとって大きな励みになっていた。桜が咲いて散り、畑から緑が芽吹き、実をつける間に石垣を飛び越えるようになったり、里山を探索するようになったり、高いところに平気に登れるようになったり。爽快にさえ感じるその成長ぶり。そしてこれからもそうあってほしいと願いからこそ下した今回の決断だった。


なのに預けるまでは本当に迷った。ふたりが新たな仲間とすぐに打ち解け、遊びだすのは安心もしたけれど、少し寂しくもあった。2度と会えないわけじゃないけど、少し距離が出来ることで、当たり前のように毎日共に暮らしていた彼らの存在を、強く感じるようになった。これからも新しい仲間と共に強く大きく育ってほしい。


こゆきとこてつが旅だって間もなく新しい仲間が現れた。つかさのお嫁さんとしてやってきたのはみのり。人に慣れてないとの話だったが、すぐに手から餌を食べてくれるようになったり、僕に馴染むのはそれほど時間を要しなかった。しかし、夫であるつかさとの関係は傍から見るにあまり上手くはいっていない様子。何とか仲良くしてもらいたいと思い、こっちで取り持っても、なかなか一筋縄ではいかない。ひとまわり大きな夫にたじろぐみのりに、
案外照れ屋なつかさ。

赤く染まった紅葉が一葉、また一葉と散り、地面がみるみる赤くなっていく。これを敷紅葉というらしい。この敷紅葉がゆっくり広がるように、つかさとみのりの恋も赤く赤く燃えてほしい。

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