村役場の屋根の上、波打つように並ぶ茶色の瓦。ずっしりと、毅然たる態度で村役場を、雨や雪から守っている。
 多くの不安を抱え、幾度もの失敗をしながらの瓦作りも、こうして出来上がりを見てみると、大いに自信の持てるものに仕上がった。ついこの間まで、少しの粘り気を持っただけの土に過ぎなかったのに、想いを込めて手を加えたことで、立派な瓦になった。まるで土に新たな命を吹き込んだ様。知恵と情熱を持ってすれば、何にだってなり得る。瓦が屋根に葺かれ、そう実感した。


 今年収穫した男米。遂に食することが出来た。
 勿論、味は絶妙。美味くないはずがなかった。そんな男米を食し、腹を満たすと、今まで味わったことのない満腹感と満足感。なるほどこの為になら惜しくない苦労だ、と思った。一粒の米がこれ程までに、ふっくらと艶やかに輝いて見えたのは生まれて初めて。初体験の真の贅沢だった。


 一方、稲のない殺風景な水田。その寂しい風景が、今日は一段と煌びやか。水田に残った水の表面が凍り、陽の光を反射させている。日光が集中したように眩しい。眺めているだけではもったいなくて、早速足を踏み入れて氷を割ってみた。身に染み渡るような心地良い音。いつからそう感じるようになったか分からないけど、僕はこの音が心地良くって仕方がない。本能(?)なのかもしれない。とにかく心地よくて、溶けてなくなる前に割れるだけ割った。


 このパキパキという音を聞いて、合鴨たちは、池へと確認のダイヴ。
しかし、何故だか池は未だ凍っていない。


前の週 次の週