毎日のように、強い風が吹き荒れた今週は、「光の春」という言葉がより身に沁みて感じられた。強い日差しは見た目だけで、風に乗ってくるのはまだまだ厳しい寒気ばかり。ただ、この寒さの中でも、春らしい日差しと、春らしい花があるだけで、季節は冬から春へと、移り変わっていく中にあるのだなと思える。こうめにとっては初めての春で初めての季節の変化。季節の変わり目をどう感じているのだろうか?古民家を元気いっぱいに走る姿を見ると、早く外で駆け回りたいのかもしれない。


 昨年の春に植えた綿花は、他の作物と同様、冷夏の被害を大きく受けた。広い畑からとれたのは、手のひらにのるほどの小さい綿。その綿はとても白くて綺麗で、とても柔らかくて肌触りが良かった。そして何より暖かい。
手のひらの小さな綿は、一年近く見守り、世話をしてきたことを思えば、残念な結果となってしまった。けれど、よくよく考えてみると、こんなものが畑から収穫できたこと自体、凄いことだ。そう思うと、この小さな一つの綿のために今まで時間を費やしてきたことにも納得が出来た。綿の心地良さに、納得させられたのかもしれない。
衣料を主として、現在多く使われている綿を見ると、いつも人の肌の隣にあったり、いつも大切なものの周りにあったりする。何かと優しく包んでくれる綿。収穫したばかりの綿には、そんな優しさがもっとぎっしりと詰まっていたような気がした。


 収穫した綿はお守りとして、明雄さんへプレゼント。思いを込めた粘土を綿で包み、袋に入れて明雄さん愛用のナタにつけた。「こりゃいいや」と喜んでくれたけれど、いつも激しい動きをする明雄さんは、落としてしまわないかと少し心配になった。お守りにするには十分の収穫だったけれど、来年はもっと収穫して、来年のこの時期の寒さを凌げるような、暖かい着る物などをつくってみたい。


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