流れてくる水が階段を下る様に、下へと流れていく。真冬に比べると、曲線を描く氷柱は数が多く、細く短い。全体を覆う氷は、むらなく薄い。昨日まで元気よく回転していた水車は、今朝そんな姿を見せた。
 寒の戻り。一晩で仕上がった氷柱は、水の動きがそのまま形になり、以前より繊細な印象がある。繊細な氷をまとった水車はまるで向日葵のよう。弥生の空を見上げ大きく深呼吸しているように見えた。


 三月三日に初節句を迎えたこうめ。近頃では体の成長よりも、走ったり、跳んだりといった行動の成長が目立つようになった。古民家内を駆け回られると、捕まえるのがとても困難で、はしゃぎ疲れるのを待つばかり。駆け回るだけならそれでよいのだけれど、跳びはねて、重ねた薪の上に乗ったり、樽の中にはいったりする時は、ただ疲れるのを待つというわけにもいかない。怪我しないかハラハラして目が離せず、まるで親にでもなった気分。心配することが多いけれど、元気過ぎて心配なのだから・・・と、よく自分に言い聞かせる。産まれた時の心配を思うと、今の心配が嬉しいと思うべきかもしれない。


 三月に入り、陽だけは依然として暖かい。気がつけばフキノトウが顔を出し始めていた。
 村長のいる水飲み場の下から現れた、いくつかのフキノトウ。フキノトウは仲良くみんな同じサイズで、並んで顔を出し、水しぶきを浴びている。中には葉を開こうとするものもあれば、まだまだ葉で包まっていようとするものもある。いずれにせよ、まだみんな小さくて、トウが立つにはまだまだ。


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