村役場の前に白い梅の花が咲いている。枝は空に向かって伸びて、花びらはいっぱいに広がって、見ているこっちが元気になりそうなほど力強く咲き誇っている。
  それに比べ、梅の近くにある桜の木は、まだ開花していない。


 しかし、木に近づき、つぼみをひとつひとつ手に取りながら見てみると、膨らみ始めたつぼみが意外とたくさんあった。膨れたつぼみは、緑とピンクが混ざり合っていてとても綺麗。表面には張りがあり、手で触れるとそのはずみで開花しそうなくらい。


 この桜の花が咲くとDASH村は急に、より春らしくなる。水も土も空気も、桜が視界に入るだけで暖かい春の装いになる。それは、桜を見ることで何より僕の気分が春らしくなっている証拠。
新しい気持ちで、新しい季節と新しい一年を迎えるときにいつも勇気付け、励ましてくれる桜。大事な節目の時期に咲く綺麗な桜は、いつの間にか、僕の一年の始まりにはなくてはならないものになっている。


 ここでの生活も一年が過ぎた。最近そればかり思う。自分自身でこの一年をどう評価していいか迷っている。それ程大切なことではないかもしれないけれど、精一杯がんばってこられただろうかとか、覚えたことがちゃんと身についただろうかとか、どうしても不安になってしまう。しかし、桜が咲けば、また新しいスタートをきれる気がしている。そして桜が散るのとともに不安も消えていくような気もする。

 

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