今週、はじめての出会いがあった。
  洗い場で鍬を洗っていたら、何か殺気のようなものを感じた。ふと下を見ると、そこにはトカゲのような生き物。明雄さんに聞いてみると、どうやらサンショウウオらしい。聞いたことはあるけれど、はじめて見た。はじめてだから、触ってみようと思った。しかし、既に遅かった。僕の中では、もう苦手とする生き物の部類に入っていたようで、どうしても触ることができなかった。諦めかけていた時、明雄さんの手にのったサンショウウオの顔がとてもかわいらしく見えた。僕はもう一度触ろうと思った。しかし、バタバタ動く姿を見て、怖気づいてしまい、結局触ることは出来なかった。 苦手なものが増えたみたいで少し嫌だったけれど、顔を見てかわいいと思えて良かったと思う。「こうやって克服していくのかもしれない」と思った。


 役場を一見すると、何か物足りなさを感じる。しかし、その物足りなさを感じるのもあと少し。村のシンボルを象った鬼瓦がもうすぐ焼ける。必ずうまく焼けるとは限らないけれど、全力を尽くしたせいか、失敗する気はほとんどしない。自分たちで作った鬼瓦が屋根に上ることを思うと、とても興奮する。既に葺かれている瓦たちも、そんな気持ちで待っていると思う。


 そんな役場の前では、桜の木が花を咲かせようと奮闘している。  つぼみの先端はパックリと割れて、その中から濃いピンクの花びらが溢れ出ている。花びらは、まだ開こうとはせず、ギュッと縮こまっている。それは外の空気や、光に触れ、不安がっているように見える。まるで、さっきまでお腹の中にいた赤ん坊のようだ。少し弱々しい様子もそっくり。さらに、ひと安心だけどまだまだ心配している僕の心境もどことなくそれっぽい。


 

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