いつも仲良く一緒に暮らしている割には、なかなか子が出来なかったつかさみのり夫婦。まわりは「まだかまだか」と待ち望んでいた。そして先日、遂に元気な一頭の女の子を見せてくれた。



 八木橋待望の初孫は、体がこうめの産まれた頃よりもまだ小さく、体重は2.5キロ。毛の色は真っ白で背中に少しだけみのりと同じ茶色い毛が生えている。長くスマートな足はつかさに似ている。



 産まれて間もない仔山羊は、どんどん成長している。
 まず、産まれたその日のうちに立つようになり、一、二歩あるいて見せ、次の日には小屋を自由に移動し、その次の日にはあぐらをかいている僕の足に上るようになった。今では、仔山羊特有のかわいらしいジャンプも時折披露できるほど。これは、こうめもこゆきもこてつも同じだったけれど、その感動や喜びは全く薄れない。命が歩き出し、大きく成長していく姿は何度でも見たいと思う。



 初めてなのは親となったつかさもみのりも同じ。特にみのりは乳をあげるという重要な役目がある。けれど、みのりはいつも仔山羊と少しはなれたところにいて、自分からはなかなか乳をあげようとしない。少し心配だ。八木橋もマサヨも同じことを思っているのか、孫の鳴く声に敏感に反応し、時折丘の上の小屋をじっと眺めている。
  そして、もうひとつ心配事はこの夏の暑さ。みのりと小屋の中にいる間は直射日光が当たらなくていいのだけれど、いつ小屋を抜け出して暑さの中に飛び出すかと思うと気が気でない。
  いろいろ心配事はあるけれど、無事に仔山羊が産まれてきたことが、とにかく嬉しい。忙しくなっても、「新しい命が誕生した」それだけで充分だ。


 

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