一時は雨が降りだしてどうなるかと思った「DASH村夏祭り」も無事に終了した。
 そしてやってくる「祭りのあと」。
 祭りのあとというのは、何か物悲しい。大勢の人で賑わう声も、綺麗に整列したちょうちんの灯りも、「ヒュ〜ドンッ」という豪快な花火の音も、何もなくなる。いつにも増して、暗く、静かな夜。
  古民家の縁側で、そんな祭りの余韻とも言える物悲しさに浸っていると、僕の頭の上あたりを飛ぶものがいた。



 それは緑色の柔らかい光を放ちながら飛ぶホタル。



 手の届くところをゆらゆら飛んでいたから、思わず掴もうとしたけれど、グッとこらえた。手のひらで光っているのを観察しても綺麗でも何でもないからだ。手で捕まえるのは諦め、目でしっかりとらえて追いかけた。ホタルは終始僕の頭くらいの高さを飛び、山羊小屋の裏まで来た。近くでカエルが鳴いているのを無視し、ホタルの光だけを追いかけていると、ホタルは近くの草の上に舞い降りた。
 そこには5・6匹の仲間がいた。そのホタルは他の仲間と会話をするかのように光り合っていた。まるでそこでも小さな小さな祭りが催されているようだった。ホタルたちのお祭りの光は、ちょうちんにも、回り灯篭にも、花火にも勝るとも劣らない、綺麗な光だった。そして、祭りのあとの物悲しさと相まって、いつもより優しい光りに見えた。
  明雄さんが用意してくれた大きな花火で夏祭りは締めくくられたと思ったけれど、そうではなかったようだ。祭りは「祭りのあと」も含めて堪能するものだと思った。



 

前の週 次の週