暑さが和らぎ始め、ほんの少し夏の終わりを感じた。


 それは、支柱の上を陣取っているアキアカネも同じらしい。黄色を帯びていたアキアカネの背中は、夏の終わりを感じ取り、赤く染まり始めた。この赤色というのは、トマトの赤でもなく、イチゴの赤でもない。十月頃の紅葉の色にそっくりだ。決して鮮やかではないその赤色は、「秋」という言葉を思わせる色だった。


 そして、道端には小さなイガイガが落ちている。夏の強い風に吹かれ、栗の木から落ちたイガイガ。まだ青く小粒ではあるけれど、もうひとつひとつの針が鋭く尖っている。木の上でもまた、秋の準備は着々と整えられているのが感じられた。


 しかし、まだ今の時期を「秋」というには早すぎて、「秋の気配」といってもしっくりこない。そして、「夏の終わり」というと何だかすごく合っているような気がする。「夏の終わり」その言葉には、いろんな意味が含まれていると思う。赤とんぼが飛び交い、イガイガが道端に落ち、陽が早く落ち始め、祭りの音が遠ざかり、学生が宿題に追われ・・・。そういったものが全て含まれている言葉だと思った。

  そんな夏の終わりが始まった。


 

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