今週、古民家の縁側で明雄さんと雑談していた。作物の話、台風の話、明雄さんの本の話。いろんな話をしているうちに、僕がここに初めて来た時の話になり、時が経つのが早いだの遅いだのの話になった。そして、僕は気になっていたことを明雄さんに質問してみた。「歳をとるごとに時が経つのが早く感じるんですが、何でですか?」明雄さんはニヤッとして「分からねぇか?」と言った。僕が「全く分かりません」と即答すると、明雄さんは「慣れてくるからだ」と言った。感動した。正にそうだと思った。やっぱり明雄さんは凄い。


 旅行などで初めての場所までの道のりは、大体行きが長く感じ、帰りが早く感じる。これは、行きは初めてのものばかり目に入り、帰りはそれを見るのが二回目であることが大きく関係しているらしい。明雄さんの言う「慣れ」はこれと同じだと思う。人生も全くではないけれど同じことの繰り返しで、だんだん慣れてくる。慣れてくると学ぶことが少なくなり、時間が早く感じる。だから歳をとるにつれ、時が経つのが早く感じる。とても納得がいく。


 でも「慣れてくる」この答えに納得した理由がまだある。それは、この村での生活を振り返ると実際よりも長く感じることだ。もう三年くらい住んでいるような気がする。でも実際は二年も経っていない。初めてのことばかりで、学ぶことだらけで、今でも分からないことが多い。時間が長く感じるのも当然だった。


 人生の大先輩、明雄さんから本当にいいことを教えてもらった。明雄さんは雑談の最後に、「時間が早く感じるのは、大人になっていく証拠だ」と言っていた。僕はこの言葉を聞いて、もっともっと大人になってから、また新しいことをはじめ、時間の流れを遅くするのもいいなとも思った。



 

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