僕は、今までメロンを食べたことがなかった。自分でもビックリだけど、確かに食べた記憶はない。嫌いというわけではなく、ただ巡り合わなかった。  しかし、全く食べるチャンスがなかったわけではない。中学くらいの時、友人宅で友人の母親に勧められたことがあった。その時のメロンは、一個何千円とする高級なメロンだった。僕は迷った。そんな高いものご馳走になっても、あまり美味しくなくて手が進まなかったら、可愛げのない子だと思われる。結局、断った。今思うと、そっちの方が可愛げがないような気がするけれど、その時はそう言ってしまった。それ以来、僕の人生からますますメロンは遠ざかった。まるでメロンに見放されたように。


 そして、2004年春。DASH村ではメロンの種をまいた。再びチャンスが訪れたのだ。


 初めてのメロンづくりで不安もあったけれど、それ以上に期待した。メロンは期待に応え、順調に発芽し、葉を広げ、つるを伸ばし、実をつけた。また僕もそれに応えるように難しい水や温度の管理には充分注意して育てた。本当に手のかかる果物だと思いながらもがんばった。そして、夏。害虫や病気にやられながらも何とか収穫にこぎつけることが出来た。つるから切り離し、持ってみるとずっしりとした重みがある。色も、網目も、大きさも充分。遂に食べる時がきた。


 縁側でメロンを半分に切ると、中から赤い果肉が見え、すぐに甘い香りがプンプンした。他のものは知らないけれど、立派なメロンであることがすぐに分かる。手に持って一口食べてみると「うまい!!」メロン味のジュースでもお菓子でもなく、正真正銘のメロン。味も食感も手に垂れる果汁も、本当に美味しい。  メロンをつくり、食べたことで、高級とされるのが体と舌をもって理解できた。そして、これからは人の家でメロンを出された時は、手が進みすぎないよう自分を抑えなければならないと思った。


 

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