11月は旧暦で「霜月」という。その名前の持つ意味の通り、11月になると霜が降りはじめた。


 空から白く細かい粉が降ったかのように、村全体が白くなった。凍えるほどの寒さなのだけど、その光景は寒さも忘れるほど綺麗なものだった。特に、古民家の裏にあるドウダンツツジの葉は、霜を装って二倍も三倍もその美しさを増した。独特の小さく硬そうな葉は紅葉して真っ赤に染まっていた。そして、その一枚一枚の葉を囲むようにして、柔らかそうな白い霜がついた。赤色を白色のクレヨンで縁どったようで、とても綺麗だった。


 日が昇るとあっという間に霜が融け、一瞬の出来事だったけれど、秋と冬を一度に見ることができた。今年、最初で最後かもしれない紅葉の霜化粧。本当に綺麗なものだった。


 この寒さになると、必要不可欠なのが囲炉裏。もうすっかり毎日お世話になっている。このうえなく暖かそうな赤い色は見るだけでもホットする。体全体もポカポカし始めると、もう心地が良くて、ふわふわと幸せな気分になれる。昔、暑いところからクーラーがきいた部屋に入るのと、寒いところからコタツの中に潜り込むのと、どちらが幸せだろうかと考えたことがある。今思うとどちらでもなかった。「寒いところから部屋に入り、寒さに耐えながら炭をおこして囲炉裏にあたる」というのが一番だ。


 

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