よく晴れた日の朝、家の屋根全体からモクモクと湯気が出ていた。霜が降りるような寒い朝にはよく見る光景だけど、その日は煙のようにハッキリと上に昇っていくのが見えた。


 いつもと違うのはそれだけじゃなかった。朝日の当たらない、家の西側の屋根は、いつも最後まで霜をとかさずに残す。その日もしっかりと白いものを残していた。でも、何だか霜と呼ぶにはふさわしくないほど、その白色はくっきりと「白色」をしているし、いつもより分厚く重そうな感じだ。様子がおかしいと思った。足元にもその「白色」はある。田んぼや畑には、さらに分厚いのがある。村を一回りするとすぐにその正体は分かった。  寝ている間に雪が降ったらしい。


 初雪が空から落ちてくるのを見たかったけれど、初雪化粧だけでも充分いいものだった。ただ、朝起きて急に雪が残っているのを見ると、それが雪だとは思いにくいものがあった。季節が急にスピードを上げて動き出し、自分だけ取り残されたみたいで少し情けないと思った。もう12月、冬だ。


 11月が終わり、秋に別れを告げるようにして降った初雪。この季節の分かれ目を一番喜んだのはやはり田んぼを駆け回る北登か。でも田んぼの下の池でもアイガモたちがギャアギャアはしゃいでいる。リンダもまた、初めての雪見たさに小屋を脱走している。こんなに寒いにもかかわらず、何だかみんな楽しいらしい。僕もその気持ちはすごく分かる。  冬を楽しんでいられるのは今のうち。水車の音が聞こえなくなるころにはそうは言っていられなくなりそうだ。


 

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