大寒らしからぬ日差しは今週も続いた。 しかし、村のほとんどの雪は、「まだまだ」と言わんばかりにねばり強く残っている。日中日陰となる場所は特にねばり強く、一日中氷をまとう場所もある。そしてそこは、ひんやりとした空気が漂い、露出している肌の感覚を直ぐに奪ってしまう。 里山の中にもそんな場所があるとは思ってもみなかった。 |
北登とのいつもの散歩道はすっかり雪が踏み潰されて溶けてしまっているから、最近は新雪を踏んでいなかった。あの感触を味わいたいけれど、畑や田んぼの雪を踏むのはもったいないし、それ程積もってなさそうだった。だから、僕と北登は建設途中の石窯の脇を通り、里山の中へと入った。 |
思ったとおり新雪だらけでギュッギュッ音をならしながらどんどん歩いていたら、物凄く寒くなってきた。雪が深くて長靴の中に大量の雪が忍び込んだからかと思ったけれど、それだけではなかった。里山の奥の方は太い木がたくさんそびえ立ち、その影がいくつも重なり合って大きな影が出来ていた。ひんやりとした空気はそのせいだった。 |
納得して来た道を帰りながら、木の陰を意識して見ていった。窯の方に近づくにつれ、白い雪の上を走る黒い線の間隔が広くなっていた。 それはまるで、寒さを表すグラフのようだった。 |