肌を刺すような冷たい風が吹いた。そのせいだろうか、村に残る雪の様子が少し変化した。
  雪は一枚膜をはったように表面だけがかたい。それは雪の上を歩くだけで良く分かる。

 足をのせた瞬間は、まるで氷の上に足を置いているような感覚。そして次の瞬間はその氷がパリッと割れて、ザクザクッと音を立てて足が下がる。パリッザクザクッ、パリッザクザクッ。村に積もる雪は、今こんな美味しそうな音がする。  野ウサギも、この音にのせられて里山を余計にうろうろしてしまうのだろうか。


 寒風のおかげで、ようやく大寒らしさを取り戻した。と思えば、もう立春。今の村に春という言葉が似合うものなんて全く見当たらないのに。それでも立春。

 さらに、七十二候(宝暦暦)なるものによると、今の時期は「東風解凍」と記されている。東風が厚い氷を解かし始めるという意味らしい。こっちも全く実感のない言葉だ。むしろ逆であるような気もする。




 

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