ますます春らしいものが増え始めたDASH村。
 一時は姿を暗ませたフキも、今では日当たりの良い斜面にぽつぽつ再び顔を出し始めた。そして、そのすぐ隣でも裸のドングリが、真っ赤に染まり、その先っぽから地中に向けて根を伸ばし始めている。

 高いところでは、木々の梢がさらに丸みを帯び、露天風呂の脇ではアセビが赤いつぼみをたくさんぶら下げるようになった。村役場の横の小さな梅の木も、白いつぼみが今にも何かの弾みでポコッと花開きそうな姿で枝を賑わしている。


 色も形も様々な生命が、村のいたるところで呼吸し始めている。今、この村にあるこれらの呼吸に耳を澄ますだけでも、ここからますます生命が増え、あと何ヵ月後かにいろんな形、いろんな色をした生命でDASH村中賑やかになることが、頭の中で描くことができる。

 と、そんな風に思っていた今週末に、大雪が降った。明雄さんも、こんなに雪が降るのは珍しいと言うくらいだ。
 長々と降った雪は、新たな生命の呼吸を聞こえなくしただけでなく、僕の頭に描かれた賑やかな村の光景までもすっかり消し去っていった。  本当に面白いくらい、春が遠のいた。
 タイムマシンに乗って真冬に逆戻りしたようだった。




 

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