緑が濃くなった里山。先日まで、生まれたての緑だったのが、今では人間で言うと高校生くらいのように見える。見た目も大人っぽくなり、いろんなことに慣れてきたという様子だ。秋に散ることを考えれば当然の生長かもしれないけど、僕みたいに何も成長しない人間にはそんな葉っぱの生長も羨ましく思える

 ここに暮らす仲間たちはみんな相変わらずな部分も持ちながら、しっかりと成長している。特に、産まれた時から知っているこうめとリンダは、体も心も大きく成長した。弱い体で産まれ、マサヨのそばにいないと落ち着かなかったこうめは、今ではときどきマサヨと角相撲をやりあうようになった。同じ小屋で暮らすリンダのおばとしても、良い見本となってそばにいてあげている。リンダも今では村のヤギで一番走るのが速くなったし、一番高いところから飛び降りられる。僕が抱いてもすぐにバタバタ暴れ、抱かれるより走る方が好きにもなった。それに、母親のみのりが死んだ後みのりばかりを探していたけど、今では現実を受け入れたのか、また元気に走ったり飛び降りたりしている。




 そんな2頭は相変わらず無邪気で、まだまだいろんなものに興味を示す。そうやって成長していくのを見るのは楽しいし、本人たちも楽しそうだ。

 村の桜は葉桜となってしまい、来年までまたあの花を見られないけれど、来年になればまた見ることが出来る。本当に見られなくなってしまうのは、無邪気に走り回る仔ヤギたちの姿かもしれない。当たり前のように一緒にいるけれど、いつの間にか大人になって今と全く同じというわけではなくなる。嬉しい成長のはずが、ちょっと寂しくも思ってしまう。




 

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