「畑に小さな黄色」。定植した苗に黄色いチョウチョウでもとまっているのかと思ったら、キュウリの花だった。
 それは、さっきまで降っていた雨を少しだけ花びらに残して元気そうに咲いていた。
 僕はそれを見て「いかにもウリ科」と思った。ウリ科の花の定義なんかは知らないけれど、この黄色い花だけを見せられても、「ウリ科の何かの花」と答えられる自信がある。瓢箪、メロン、スイカなど様々なウリ科の作物を見てきて、いつの間にかそういった自信が付いていた。

 そう言えば、茎にしてもウリ科はみんなボコボコしていて小さなトゲトゲがある。葉っぱもよく似ている。新たな発見だったが、心の奥のほうで前から感じていたらしく、そう驚きはしなかった。「ふーん」という感じだった。




 けれど、次のことに気が付いた瞬間、僕は鳥肌が立ってしまった。「ウリ科の仲間はみんな似ている。ことわざにあるウリ二つとは、ここからきているのでは!?」何気ない発見から、普段何気なく使っている言葉の語源に触れられることができた。まるで、このことわざが出来る成り行きを体験したようで、物凄く感動した。
 しかし、ことわざのことが詳しく記してある辞書で調べると、全くの思い違いだった。「ウリの実は真二つに割っても左右がほとんど変わらない」というのが正しいらしい。
 少し落ち込んだ。鳥肌を立てて感動していた自分がとても恥ずかしくなった。

 今年は6月5日が二十四節気でいう「芒種」。芒種とは、麦や稲など針のような突起のある植物のことで、この時期に麦を刈り取り、稲を田植えすることからそう呼ぶらしい。気が付けば村の麦もふっくらしてきて、苗代の稲も田植えできそうな丈に育ってきた。畑には花、金色の麦、そして田んぼには稲。賑やかな季節がもうすぐやってくる。




 

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