田植えを終えた田んぼには、綺麗に並んだ稲の苗。当然の姿のようで何の違和感もないから、僕たちの努力も忘れそうになるくらいだ。
 広い田んぼに一株一株稲の苗を植えていく。単純そうに見えて実に難しい作業だ。

 例年のように近隣の方々の力を借りた今年の田植え。普段これ程大勢でひとつの作業をするということがあまりないせいか、作業中はいつもより明るく楽しい雰囲気だった。しかし、この大勢での楽しい作業が、僕には物凄いプレッシャーにもなる。

 DASH村での田植えは、毎年「三角定規」という農具を使う。「三角定規」は長い三角柱の定規のようなもので、これを転がしながら田植えをすると、株間が一定になって苗が綺麗に並ぶ。そんな便利な三角定規が、大きなプレッシャーの原因だ。誰か一人が遅れたら、三角定規は転がせない。つまり、みんなその人待ちになってしまう。だから僕は足を引っ張らぬよう、一列一列ドキドキしながら限界の速さで作業しなければならない。




 左手に持った苗の束から3〜4本右手にとる。しかし、苗の束は根っこが絡まりあっていて、そう簡単に3〜4本は取れない。まずここでもたつく。そして、右手にとった苗を植える時も、深すぎず浅すぎないよう注意して植えなければいけないし、もし、苗を植えるべき場所に自分の足跡など残してしまった時は、手で平らにならさないといけない。だから、一歩足を動かすのもかなり慎重になってしまう。

 これらを上手くクリアできれば、みんなと一緒に三角定規を転がせる。上手くいかなかったら、植えている最中に三角定規が転がってくるから、「ちょっと待ってくださーい」と叫ばなければいけない。そして、みんなを待たせなければいけない。

 そんなプレッシャーと、腰を中心とする痛みに耐えれば、綺麗に整列した田んぼの苗を見ることが出来る。そして、DASH村五年目の田んぼづくりの大きな第一歩を踏み出すことが出来る。




 

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