田んぼでは、植えたばかりの苗が日に日に土と馴染んできた。綺麗な緑の葉の色も、真っ直ぐに伸びる姿も、苗がしっかり田んぼに根付いた証拠。一方の畑もまずまず順調で、キュウリ以外にもジャガイモやピーマンやトマトといった作物が次々と花咲かせるようになった。

 村の多くのものが著しく変化するこの季節。里山にも変化があった。
 それは新たに増えた8つのヤマガラの声。




 1ヶ月程前から現れ始めたヤマガラの夫婦は、巣箱に8つの子を生み、育て、巣立たせた。ヤマガラの家族がそこで暮らしていたのは短い期間だったけれど、僕たち人間と同じような苦労や、喜びといったものがあるように思った。そして、親が子を想う気持ちもまた、人間と同じだった。子が危険な目に遭った時も、飛びたいのに上手く飛べない時も、助けるのはやっぱり親だった。
 鳥の世界でも、親は子のことを心配するし、子は親がいてくれることが大きな力となっている。「動物」というひとつの生き物だから、僕たち人間と似ていて当然なのかもしれない。

 僕たちと同じように、家族の元を離れてそれぞれで生きていくようになったヤマガラの子供たち。8羽とも元気で暮らしているだろうか?なかなか見つけることは出来ないけれど、きっと里山に増えた鳥の鳴き声は、ヤマガラの子供たちが心配する親に無事を知らせる便りのようなものなのだと僕は思っている。




 

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