雨が降った。
めったに降らないような大雨。
たくさんの雨粒の中の、ほんの一部は村役場の瓦に落ちてきた。

村役場の瓦に落ちた雨粒は、ひとまとまりになって、瓦を流れて、地面に落ちてきた。
落ちてきた雨粒は、また地面でまとまりあって大きな固まりになった。
固まりは湖になった。長細く浅い湖。

ただ、その湖は途切れていて、ひとつの湖じゃなかった。
みんな同じようにして落ちてきたのに、別々の湖をつくった。
それぞれの湖は、他に負けないように大きくなろうと競い合っているように見えた。




どれを応援するでもなく、ただ見ていると端っこの二つが和解してひとつになった。
すると反対側でも和解し始めて、とうとう二大湖の戦いとなった。

二大湖は仲が悪そうだった。
雨が弱まり始めたから、僕は人差し指で仲を取り持った。
指で引いた線が川になって、最後にはひとつの大きな湖が出来た。

役場の幅と同じ幅の細い湖。
一日で歴史が生まれ、僕の人差し指も大きな役割を果たしたような気がした。
翌朝には幕を閉じたひとつの湖の歴史。
最初はみんな同じように空から落ちてきた。




 

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