朝と晩に聞こえるヒグラシの声が日ごとに大きくなってきた。

 天気も音も夏らしくなってきた村で、畑もまた夏らしい顔ぶれが揃い始めた。

 例年通り畑の畝に並ぶキュウリ、トマト、ピーマンといった作物たち。この作物たちは、この時期になると足並み揃えて実を大きく実らせる。例年に比べると多少遅れはあったものの、今年もそのチームワークは健在で、足並み揃えてしっかり実らせるようになった。
 もうじき食べられるキュウリ、トマト、ピーマンを目の前にして、とても分かり易い作物だと感じた。何が分かり易いかと言うと、これらの作物は見た目で「この実は食べられる」と簡単に思える。これまで、いろんな作物を栽培して食してきたけれど、とても分かりにくい作物も多々あった。「これを食べられるってよく分かったな」と世界で初めてそれを食べた人に感心するほどのものもあった。




 けれど、今目の前にある作物はそうではなく、初見であってもかぶりつくかもしれないと思うほどの分かり易さがある。
 おそらく、その分かり易さの原因には、陽の光を浴びてキラリと輝くその姿が関係していると思う。葉っぱや茎、その他の分かりにくい作物にはない光沢は、いかにも「主役です」といった感じだ。

 この主役たちの放つ光でいっぱいの畑に、キラリと光る目を持ったトンボたちも集うようになった。支柱にとまるトンボのアキアカネもすっかり村での夏の風物詩。畑では、夏らしい顔ぶれがキラリとしながら足並み揃えてあらわれ始めている。




 

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