収穫したての夏野菜とキンキンに冷えたかき氷、そして自分たちで釣ってきた天然鰻でつくった鰻丼。今年の夏の土用は、最高の食材と最高の気分で贅沢に迎えられた。

 土用の主役とも言えるうなぎは、近くの川で獲ることになった。けれど、大雨に見舞われて茶色く濁る流れの速い川では、そう簡単なものではなかった。踏ん張りながら歩いて、見えない水面下を延々と探っていた。前の日に仕掛けた仕掛けは、あまりに川の表情が変化したせいで仕掛けた場所すら分からない。主役なしの土用はなんとしても避けたいと必死になって探していると、ようやく仕掛けにかかっていた一匹のうなぎを捕獲。結局釣れたのはその一匹だけだったけれど、充分な大きさの天然鰻が手に入った。




 村に帰った頃には少し雨が弱まっていた。縁側でつくったカキ氷を食べて、夏野菜を収穫。少し生育が遅れていた今年の夏野菜も、この土用の日に合わせたかのように大きく実り、畑の中でむしった実をそのまま食べると、春からの努力が一気に報われる幸福感に包まれた。

 夕方になると雨はほとんど上がっていた。うなぎを明雄さんがさばき、焼いてタレを塗って男米の上に乗せて食べる。春、種をまいて食べられるようになった夏野菜と同様に、大雨の中、血眼になって探した一日の苦労が報われたような味だった。自分たちのために自分たちでつくり、捕まえ、食べる。苦労はもちろんあるけれど、それに値するだけの幸せを食卓で味わうことが出来る。

マリサさんとの久しぶりの再会と、明雄さんの奏でたアコーディオンの音色と、本当に今年の土用の日は楽しく贅沢な夕げだった。




 

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