「この暑さは一体なんなんだ!?」
 そんなことを思いながら村を歩いていると、いろんなものが「夏ですよ」と教えてくれる。緑深い里山も、威勢のいいヒマワリも、ピカピカの夏野菜たちも、村の多くのものがそう伝えてくる。
 この村の人以外の生き物はこんな暑さなんて気にもしていない様子で、とても元気で活き活きとしている。当たり前だ。でも同じ様に「生きている」僕だけがこの季節のこの暑さに眉間にしわをよせ、「あつい・・・」と嘆いているのは何か納得がいかない。この厳しいほどの暑さを喜ぶものと、嘆くもの、なんでこんなに差が激しいのだろう?

 でもやっぱり、便利なものばかりに頼った生活を送ってきたことを考えると仕方がないことなのかもしれないとも思う。むしろ、便利なものばかり使って環境を破壊して、他の生き物みんなに迷惑をかけている。迷惑された方からしてみれば、そっちの方が納得のいかない話だ。




 「この暑さは何だ?」の答えは、この村で暮らす前に扇風機やクーラーなどに頼りすぎていた僕自身に聞くのが一番速く、正確だった。村でただ一人暑さに嘆いているのがよく理解できた。

 あまりの暑さからきた怒りが、結局自分の方へ向けられてしまった。こうなればもう出来る限り薄着して、汗を汗で流すしかない。流す汗がなくなれば井戸水を飲んで、浴びて、冷やしたスイカなんかを食べて・・・。とても贅沢だ。
 そう言っているうちに眉間によせたしわもなくなって、村のみんなと同じ「生き物」になれることができると思った。きっと墓の中のご先祖様もそうやって夏を乗り越えてきたのだろう。




 

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