涼しさが増してきた夕方には、少しおとなしい虫の声が聞こえるようになり、DASH村にも秋が宿り始めた。

 村の野の花たちも夏から秋へと移り変わったようで、ひと月前に比べると、咲く花の種類も随分と変化した。アザミ、ツユクサ、オトコエシやオミナエシなど、夏に見られなかった野の花が溝や山や畑の脇に、所狭しと混ざり合って咲くようになった。




 彼らは毎年この時期に村で咲いていた馴染みの花たち。毎年、変わりなく同じ花を咲かせ、季節の移ろいを知らせてくれている。しかし、この馴染みの小さな花たちにも、小さな変化があることに気付いた。それは、花を咲かせる場所。毎年花の咲く範囲が変わったり、急に別の場所に咲いていたりもしている。

 その変化が目立って分かるのは小さな青色のツユクサ。昨年までは、役場の横に建てた火の見やぐら辺りでしか見られなかったけれど、今年はビニールハウスの脇や、水車の水路、さらに遠く離れた果樹園の入り口にまで群生するようになった。理由は分からないけれど、きっとこの村にとって良いことだ。巡り巡って僕らに何か与えてくれるものかもしれないし、また、新たな生物を招き入れるきっかけになるかもしれない。でも一番は、綺麗な花をいろんな場所で見られるようになったこと。それが嬉しい。

 春、夏、秋、冬、それぞれの季節の中で、咲いては枯れてゆく野の花も、こうして毎年仲間を増やして生長している。このツユクサは、来年どこまで勢力を拡大するのだろうか?それとも別の花が増えるのだろうか?来年も再来年もそのまた次の年も、DASH村が全く同じということはないのだろうなと思った。




 

前の週 次の週