「スポーツの秋」「読書の秋」「食欲の秋」など、秋には楽しみ方が様々ある。けれど、今年の秋の楽しみ方はただ一つ、「芸術の秋」だ。

 長かった登り窯づくりがようやく終わり、いよいよ本当の目的である陶器づくりがスタートした。陶器づくりといえば、ロクロ。誰もが一度はやってみたいと思う、あの憧れのロクロ。僕はロクロを回すのは今回が初めてだったけれど、何故か変に自信があった。でも、そんな自信も実際ロクロを回してみると、粘土とともに無残に崩れ落ちた。長橋さんが1分で出来る湯飲みが、僕は1時間かけても出来ない。陶器づくりは登り窯づくり以上に困難かもしれない。




 でも、陶器をつくる難しさを理解してくると、ちゃんとしたものが出来なくたってつくることが面白くなってくる。回転する粘土の中心をとることだったり、手の力加減だったり、やればやるほど良い陶器のつくり方を体に覚えさせることが出来る。それでも、1時間費やして出来たものは、ボコボコでガタガタ。正に「芸術」という言葉でしかフォローできないものだ。

 木々の葉が一枚また一枚と色付いてゆく中で、ああでもないこうでもないとひたすらロクロを回している。いつちゃんとした陶器が出来るのかわからないけれど、こういった時間を過ごしているだけで、ちょっと気持ちがいいものだ。




 

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