スッキリとした田んぼには、稲がぶら下がっている。そして、顔をうずめたくなるくらいたくさんの米粒がそこに集合している。

 何万粒という米粒たちは、僕たちが春から秋にかけてつくり上げたものだ。この小さな米粒ひとつひとつが、DASH村産の男米。当然のことだけど改めて考えてみると、自分が実感している以上に凄いことであるような気がしてくる。




 「これは僕たちの子」そんな風に言い換えると、本当に凄い。重なり合って目の届かないところにある一粒だって、刈る時にぽとりと落ちてしまった一粒だって、みんな僕たちの子。どこの米粒よりも可愛らしく思えるのは当然だ。

 何万という可愛い米粒たちは、みんな似ているようでみんな違う形だ。これも「生命」だから当然と言えば当然。でも、これもよく考えてみると凄いことだ。僕はそれを微妙な形の違いでしか感じることは出来ないけれど、僕ら人間ひとりひとりに物語があるように、この米粒ひとつひとつにも必ず物語が存在している。僕の存在は親ではなくほとんど同じ立場という方が正しいかもしれない。
 米粒をじっと眺めるのは、都会の人ごみの中に身をおくのと少し似ているように思った。




 

前の週 次の週