いろんな色があった村も、今ではほとんどが白色。 春のようなピンクも、夏のような緑も、秋のような紅も、今はどこにもない。

 土色がたまに顔を出すけれど、翌朝にはまた白色が上から塗りなおされる。

 あるのは白。たったそれだけだ。

 まだまだ薄い白色だけど、別に早くなくなって他の色に会いたいとも思わない。
 今はこのままがいいと思う。この白色は辺りの音を飲み込んで、静かな時間をくれる。過ぎようとする1年をあれこれ考えてしまう12月には、とてもありがたい時間だ。




 この白色は僕の気持ち次第でいろんな表情をする。
 怖い表情もするし、優しい表情もする。
 時には暖かそうな表情さえする。
 僕の気持ちまで飲み込んで写し出す、まるで鏡のようだ。

 村にある白色は何も訴えかけてこないただの白色に見えて、実は1年の最後に空がくれた貴重な時間のプレゼントかもしれない。




 

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