いつも聞こえるはずの豪快な水の音が少し静かになった。

 木がきしむ音もなくなった。

 畑の近くまで行くとその理由が全て理解できた。水車が凍り付いて、止まっている。

 この時期になると動きを止める水車。毎年見られる光景ではあるけれど、その年々で違った姿で動きを止める。
今年の水車は、クネクネといびつに曲がる氷柱が少なく、いろんな方向へ真っ直ぐ伸びている。例年に比べると氷柱の大きさや太さも均等だ。
 昨年は近寄りたくなくなるほど威圧感溢れる姿だったのに、今年は寒さも忘れて思わず触れてみたくなるような優しい姿。

 今年の水車は、まるで氷の花。




 

 風に吹かれてもビクともしない、香りも漂わせない、ただただ冷たいだけの氷の花。陽の光も嫌い、水路から流れ落ちる水と寒さだけが栄養になる不思議な花。

 そんな氷の花も、今はとても綺麗で優しい姿をしているけれど、いつまで見られるものかは分からない。明日の朝はもっと優しいのだろうか?それとも刺々しいただの氷になっているのだろうか?




 

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