毎年、早く過ぎてゆくように感じる1月。今年も気が付けば残りわずか。

 1年で最も大きいこの寒さを乗り越えれば、もうそこには春が立っているはず。土も水も風もかたく冷たいままだけれど、じきに柔らかく暖かくなる。

 そうやって思いを馳せるとともに、心の準備をしている。 そのせいだろうか、僕の足は自然と裸の里山の中へと進む。




 一見、昨年から何の変化もないような里山の景色だけど、実は違う。殺風景とも言えるこの景色の中は、新しい生命で溢れている。
 木々が張り巡らせる枝の先端に、ポツポツとある新しい芽。顔をそばに持っていかなければ確認できないくらいまだ小さい芽は、まるで冬を打ちのめそうと潜伏しているかのよう。見つからないように硬い皮の中に何かを忍ばせて、じっと誰かのサインを待っている。何時、誰がサインを出すかは分からないけれど、そのサインが出ると硬い皮の中に隠し持っていたもので、この里山は満ち溢れる。そしてそれはきっと、暖かく柔らかい季節の始まりとなる。

 2月を迎え、大寒を過ぎれば立春。だからと言ってこの寒さは急になくなったりはしない。けれど、この時季から村に新しい生命が芽吹くようになる。誰かが出すサインもきっともうすぐなのだろうと思う。




 

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