茶色い土を削りながら流れる雪解け水。

 この流れる水はいつ村に降ってきたものだったのだろうか?つい先日降った雪かもしれないし、一ヶ月以上も前のものかもしれない。今まで積もりに積もった雪が、今週の暖かい陽射しによってどんどん水になり、茶色い地面に川をつくってゆく。

 日中に日当たりの良い場所は、もう全く雪を残していない。それどころか雪で濡れた部分もすっかり乾ききって、風呂上りのようにさっぱりとしていて、身軽で、新鮮味もある。その部分だけは春に向けての準備が整ったようだ。




 そして反対に、細くクネクネと地面をさまよう雪解け水の川は、まるで居場所をなくし、行く当てもなく混乱しているよう。けれど、確実に川は幅を広げて大きくなり、一つの方向へと進んでいる。
 春が宿った村で、冬は居心地が悪いように見える。

 そんな川が多く流れてゆくすぐそばにある桜の木。いろんなところに傷や治療の跡がある老いた桜は、今年順調に新しい芽をつけ始めた。




 

前の週 次の週