ここDASH村の春にも三日の晴れはない。清々しく晴れてもそれは長く続かず、すぐに曇りや雨になり、時には雷も伴う。気まぐれな春の空は、まるで落ち着きのない子供のように僕らを巻き込み、騒ぎ立てている。

 そんな春の空も、ただ光と水を気まぐれに地に注いでいるわけではなさそうだ。地上にはそれを糧として生きるモノが多くいる。長くツボミのままでいたスイセンや、役場裏ですくすく育つツクシ、そしてもちろん僕らも。みんながこの無邪気な春の空の恵みを受ける。そんな空に感謝しつつも、晴れ間がもう少し長く続くことを僕は密かに願っている。




 
 リンダの婿としてやってきた晴男。DASH村への興味は未だ尽きることがなく、いろんな場所にいってはそこで立ち止まり、考えるような仕草をしては、それと触れ合う。晴男は、新学期に新たな友達をつくるように相手を観察し、また自分を見せている。順調に村の住人となった晴男に対して、心配なのは嫁に行ったこうめ。生まれ育ったこの地を離れ、家族からも離れて全てが新しい環境で暮らすことをどう感じているのだろうか?けれど、人懐っこさといい、旺盛な好奇心といい、晴男とこうめは性格が似ている。きっとこの村の晴男のように、こうめも新たな環境に興味を示し、多くの友達が出来ていることだろう。

 すれ違ったこの二頭の山羊は、見えない糸でつながっている。家族でもなければ恋人でもなく、同居人でもない。けれど、僕にはそう感じられて仕方がない。
  それを確認する意味でも、たまにはこうめの様子を見に行こうと思う。

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