世間はゴールデンウィーク。どちらかというとそういった連休に関係のないこの村にいても、世間の賑わいを思い、少しだけ気持ちが高ぶってしまう。この春空の下、いろんな人たちが、いろんな冒険をしているように思える。

 春空の下、僕が歩く足元、小さい花が点々とある草むら。そこは小さな虫たちが冒険する、ジャングルだった。
  僕が草むらを一歩進めば、小さな虫たちはあわただしく動き出す。そうするまで僕は虫たちに気付かないけれど、動き出せばたくさんの虫たちを見られる。だから、僕はゆっくりゆっくりこの草むらを歩き、ザワザワ動く虫たちを観察する。観察するといっても、存在を確認するだけで、みんなとても動きが速くてしっかりと見ることは出来ない。だから結局僕は小さな花を観察する。




 小さな虫たちは必死になって僕から逃げなければならない。目の前に美味しそうな花の蜜があっても、あの灰色のツナギを着た巨人が来ると、動きを止めて息を殺さなければならない。この広いジャングルの端から端まで、みんな一斉にそうしている。そして、黒い長靴が頭の上に見えたとき、彼らは逃げるしかないと判断して全速力で逃げる。葉と葉が重なり合う部分を逃げ道にしたり、その下では、そびえ立つ太い茎を必死にかわしながら逃げたりする。どれだけ目標の花に近づいていても、そうやって引き返すしかない。そして、灰色の巨人の目から逃れ、また目標を探す。

 彼らの中にも、敵味方は存在するだろうけど、僕はジャングルに住む者全員の共通の敵だ。そして、彼らにとっては大きすぎて歯が立たない敵。でも巨人は、最近右肘あたりが腫れていて、その日は痒くてたまらなかったけれどもう治った。痛くも痒くもない。だから彼らは巨人がジャングルに足を踏み入れないことを祈るしかない。しかし、その祈りは叶うことはない。それは彼らが捜し求めている花を、巨人もまた捜し求めているからだ。彼らはそれを分かっていのか、分かっていないのか、ジャングルからは逃げ出すことはなく今日もまた花を求めて冒険をする。

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