村の中を歩くと、今一番元気よくたくさん咲いているのがハルジオンだということが良く分かる。
  6月の陽射しの下、どこでも雑草の中から自由気ままに顔を出す。けれど、ハルジオンという花は実に個性豊かな植物で、どこに咲いているハルジオンもそれぞれの表情を持って咲こうとする。

 まずハルジオンの個性を感じる部分は、花びらの色にある。純白からピンクまで、それぞれがその間の色をしている。白色の絵の具にどれだけ少しずつピンクを足したとしてもこんな色にはなりそうもないくらい、微妙な色のものばかり。中には、花びらの先端はピンクっぽく内側が白っぽいというグラデーションのかかった花もある。ほぼ紫色に近いようなピンク色のものもある。ハルジオンの色だけでも何通りあるのか数えることは無理だ。




 それに加えてそれぞれの個性を発揮できるのは、その色をつける花びらの形。一番多く見られるのは、細い花びら一枚一枚をピンと伸ばしきった状態のもの。健康的で最も綺麗な形かもしれないけれど、他の形も十分に魅力あるもの。花びらを開かずに中央に集まって渦を巻いているものは恥じらいを持っているようで可愛らしいし、まるで風車のように花開きながら一方に花びらを曲げているものは風をうけることや日光を浴びることがとても楽しそうに見える。また、僕のように寝癖をつけたままのだらしない花びらもあれば、明雄さんのようにピシッとして几帳面そうなものもあり、虫に食べられて寂しいことになってしまっているものもある。

 形と色だけが違うというわけではないけれど、この違いが生む面白さは、花の表情や個性、性格といったものまでを僕たちに伝えてくれているように感じる。そして、どの花も口を揃えて伝えてくるのは、みんな同じハルジオンだということ。 それは、本当の「自由気まま」を、教えてくれているようだった。

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