DASH村を去る時がきました。

 最後の作業と決めていた鉄砲風呂づくりが終わり、湯につかってはじめてDASH村での生活が終わるという実感が湧いてきました。村の外へ旅立つ期待が大きかったはずが、急に寂しくなってきてしまいました。でも、ここから見える景色はいつもと同じ姿で、そんな僕を励まし、また、叱るかのように大切なものを思い出させてくれます。数々の思い出とともに多くを教えてくれたDASH村。僕にとってここの景色は分厚いアルバムで、分厚い教科書のようなものです。


 目の前に見えるDASH村役場。思えばこれを再建するというのが、僕の初めての作業でした。頭で考えることなどほとんどできず、ひたすら体だけを動かしていました。それでも、みんなの力でひとつのものを完成させたということは、僕にとってとても大きな喜びでした。今まで自分の力を信じられるようなことなど何一つ成し遂げたことのなかった僕にとって、それは本当に大きな自信にも繋がりました。さらにその中で、先人たちが生み育んできた知恵や技を学べることは、とても幸運なことだったと思います。


 モノをつくるということは、ただそれだけのことではない。そう教えられました。

  人生で初めての経験だった作物をつくるということ。そこにも学ぶべきことは多くありました。小さな種を真心込めて育てれば、僕たちの生命をつなぐ源となります。今までそれを知っているつもりでしたが、実際に自分たちでつくることをしてからは本当の意味でそれを知ることができたと思います。食べ物に感謝できること、生き物に感謝できること、それらと共に生きることの大切さ、全てDASH村に教わりました。


 温かい人たちに見守られ、大好きな動物に囲まれて、いろんなことを教えてくれるDASH村での生活は本当に幸せでした。全てがなくなると思うと寂しくなってしまいますが、この景色を見て、僕は旅立つことの大切さも今は感じています。


  ここにきてからの4年間、僕はずっとみんなの背中を見て歩んできました。明雄さん、トキオのみなさん、近隣の方々。みな僕など比べ物にならないほどの経験を持った人たちです。その人たちの後を進むことは本当に一歩一歩が勉強で貴重な時間でした。けれど、それはいつしか僕にとって大きな甘えにもなっていました。僕が遅れたときは、みんなが立ち止まり、僕を助けて引っ張ってくれる。本当に嬉しいことですが、僕自身が尊敬するみなさんのようになるためには、ここを出て一人で歩かねばならないと思います。ここで学んだことを活かすという意味でも、誰の背中も見ずに、一人で全てをやってみたいのです。そして、みんなの知らないことを知り、体験し、僕だけの何かを見つけたいとも思っています。異国の地へと旅をすることは、そんな僕に今一番必要で、やりたいことです。何が起きるか分かりませんが、丸裸になった自分をしっかりと見つめようと思います。


  ここで生活したことが今後、僕の人生にどう役立つのか?今の時点では具体的には分かりません。ただ、小さくても少なくても確実に僕という土の中に種がまかれたように思います。ここから更に多くの人に出会い、いろんな環境に触れ、文化を知ることによって、いつかこの種を芽吹かせ、花を咲かせて実らせたいと思っています。


 後を任せる人間として安部という者がいます。彼女は何事にも熱心に取り組みます。そして、泥だらけになりながら決して諦めることなく、最後まで物事をやり抜く性格です。その姿は、明雄さんや近隣の方々からも一目置かれるほどです。料理が得意でもあり、村では彼女の料理を食べることが多く、スタッフの中でもその腕前は好評です。作る方も得意な彼女は、食べる方も得意としているようで、自身の誕生日にはケーキを1ホール1人で食べきるという逸話もあります。そんな彼女ですが、何よりDASH村が大好きだということで、僕は彼女を村人に推薦しました。彼女ならきっとよい村づくりができると信じています。3代目となる村人安部景子を宜しくお願いします。

 最後に、DASH村をご覧の皆様、本当にありがとうございました。ご期待に応えられる様なことは何も出来ませんでしたが、いつも温かく見守って下さる皆様がいてくれたことで、僕は辛い時も乗り越えることが出来ました。

本当に、本当に感謝しています。
ありがとうございました。











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