夕方になると時折涼しい風が吹くようになり、ススキが風に揺れているのを見ると、夏も終わりに近づいてきた気がする。役場前の栗の木もたくさんの実をならせ、地面には秋を待ちきれない緑の栗もいくつかあった。そんな栗と同じ気持ちなのか、秋のトンボ「赤トンボ」も日中の暑い中飛びはじめた。どうやら秋は着々と近づいているみたい。

 小さかった桃も成熟を向かえ、ちょうど食べ頃の時期をむかえた。春の「いちごバイキング」に続き夏は「桃バイキング」、本当に村の作物というのは私のお腹を休ませてくれない。先週実りの時期をむかえた「とうもろこし」もまだ残っているのに、このままだと「とうもろこし」を食べ終わる頃には桃が腐っているかもしれない。そのことばかりが気になる。




 私がこれだけ桃にこだわるのは、世界中のどんな果物よりも桃が好きだからだ。「見た目」「味」「食感」の3つのポイントからいってもどの果物には負けないと思う。ただ、「食べずらい」という難点はあるが、桃のおいしさに比べたら皮をむく苦労・食べづらさなんて当たり前。見た目もピンクで美しく、皮を剥いても白色で美しく、実も柔らかくて本当においしい。こんな果物この世にあってよいものかというぐらいすばらしい・・人間で桃のように外見も中身も美しい人はなかなかいないんだろうなと思うと桃になりたい。

 私が桃に気をとられている間に田んぼのお米達も着々と成長していた。男米は出穂をはじめ、綺麗な穂を出している。太陽の光と風が重なりあった時は、まるでさざ波のようで一段と美しい。山にいるのに海に行った気分にしてくれる。
 そんな美しさに惹かれたのか北登が田んぼの方に近づいていった。北登にもこの美しさが分かってもらえて嬉しいと思っていた矢先、北登が出穂ばかりの稲をむしゃむしゃと食べだしたのだ。北登は白いお米になるまで待ちきれなかったみたい。保原さんの時はこんなに食いしんぼうじゃなかったのに早くも私に似てきたのだろうか・・・

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