緑色だった栗も茶色がかってきた。着々と秋が近づいているはずが、まだまだ続く残暑で村の住人達もくたくた。さすがの北登も米俵のようにドスンとかまえて小屋の前から動こうともしない。

 役目を終えて田んぼから無事引越しを終えたアイガモ達は池で楽しげに水遊びをしている。それもそのはず、日中はまだ30℃を越える真夏日。しかし、夜になると18℃ほどで夜風が冷たくなりはじめた。これだけ温度が違うと、人間は着るものにも困る。そう考えると、北登やアイガモ達は衣装いらずで羨ましい。




 この暑さでみんなくたくたの中、田んぼの稲達は元気よく生長していた。ようやく出穂したと思っていた稲がもう穂を垂れる程になってきた。この稲の生長が気になったのかトンボが田んぼの上を気持ちよさそうに飛んでいた。アキアカネ、イトトンボ、オニヤンマ、シオカラトンボ・・・その数は数えられない程。ふたりで飛んでいるトンボもいれば、風に吹かれても穂にしがみついているトンボもいる。田んぼの端を見ると、遊び疲れて休んでいるトンボも何匹かいた。遠くから見ると、田んぼがまるでトンボの遊園地のよう。私もトンボになれればなあ。

 ふとみると他にもなんだか楽しそうな2人の姿があった。それはリンダと晴男。2人は仲良く草を食べていた。ついこないだまで八木橋夫婦のことをうらやましくみているばかりだった晴男には「秋」ではなく「春」がきたみたい。2人が一緒に草を食べている姿を見ていたら、私まで嬉しくなった。

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