村を華やかにしてくれたひまわりがおじぎをしているのを見ると、夏の終わりを感じ少し寂しくなる。
 村人となっての初の大仕事「藻塩焼き」も夏と共に終わりをむかえ、まるでひまわりのおじぎが「お疲れ様でした」と言っているかのように見えた。それぐらい藻塩焼きは大変な作業だった。

 普段料理に何気なく使っている「塩」は知っていても「藻塩」という言葉自体は初めて聞くもので、どんな塩かも分からないままに藻塩づくりは始まった。頼りはむかし塩田で塩を作っていたという明雄さんの知識だけ、不安な作業は進んでいった。
 毎日「ホンダワラ」という海藻を海水につけては干し、少しずつ水を蒸発させていくという作業を繰り返していった。これは水分を蒸発させるだけでなく、ホンダワラの旨みを海水にしみ込ませるといった意味もあり、まさしく一石二鳥の作業。本当に先人の知恵には驚かされる。




 また、この塩づくりはとても天候に左右されるもので、雨が降れば急いで縁側に取り込み、晴れれば外に出しと、とても大変だった。また曇り続きでホンダワラが一部腐ってしまったりして本当に藻塩がつくれるのか心配になった時もあった。

 そんな作業の甲斐あって、今まで食べたことのない「まろやか」で「甘い」藻塩が完成した。色は茶色で見た目は悪いが、味は白い塩に比べたら数百倍もおいしい。やはり、塩も、人間も、見た目で判断してはいけないということだ。
 そして藻塩で作った冷し麺の塩ダレは海の香りがいっぱいで、暑い夏を涼しい気分にしてくれた。

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