里山が徐々に赤く染まり、普段北登と散歩で通っている道もまた違ってみえる。鴨小屋隣のイチョウの木やその周りの木々も黄色に染まり、何かパーティーでも開かれるような気配。そしてこの秋、黄色く染まった作物が初収穫を向かえた。
 その黄色いものとは、「カラシナの種」一般的に言うとあの黄色い「辛子」。「辛子」と言えばスーパーで売っているような練り辛子やホットドッグの上にのっている粒マスタードしか見たことがなく、いったい「辛子」がどんな原料でできているのか、日本で栽培できるものか全く知らなかった。

 そんな中始まった「カラシナ」栽培だったが、見た目は「菜の花」そっくりで、2つ並んでいたらどちらがカラシナか分からないぐらい。よっぽどのプロでないと気づかないぐらいそっくり。さらに驚くことに辛子の種は種の時点では全く辛くなく、お湯を加えて、15分くらい置くことによって辛くなる。おそらく100%の人が辛子は粉の状態でも・種の状態でも辛いと思っていただろう。私も恥ずかしながらその一人だった。
  しかし、今回カラシナから栽培したことで、辛子というのは、水がなければ辛子になることができない、つまり水がなければ「辛子」のうちの「子」の状態でしかなく「辛」がないのだということが分かった。辛子は大きな顔で「辛子」と言っているが、水があるからこそ自信をもって「辛子」と言えるのである。人間も同じだが、人の手を借りて自分も成り立っているということに気づかなければと少し思った。辛子にこんなことを教えられるとは・・・・・・




 そしてカラシナと一緒にこの秋収穫となったのが、2年目の「蓮根」。今年は去年に比べると少しこぶりではあったけれど、辛子蓮根を作るにはちょうどいい太さとなった。まさしく、辛子蓮根のために作られた蓮根。そして一番最後に成った部分の実は明雄さんが刺身にしてくれた。また、この刺身が今まで食べたことがない美味さで、あっという間になくなってしまった。「箸が止まらない美味さ」とはまさにこのことかと思った。新鮮な蓮根だからこそ味わえるおいしさ、そして自分達で栽培してきた蓮根だからこそ味わえる喜びなんだと改めて感じた。

 作物を栽培すると本当に栽培以外のことも学べるなと思っていると、後ろで「むしゃむしゃ」という声が聞こえた。どうやら八木橋は栽培の喜びは分からないようだが、味わう喜びだけは感じているみたいだった。いつになれば栽培の喜びも感じてくれるのだろうか・・・・

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